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警視庁の見解は?

「横断歩道で歩行者側から譲られた際、ドライバーはどうすればいいか」について警視庁に問い合わせたところ、「いついかなるときでも取り締まりの対象とならないようにするには、歩行者が渡るまで待つしかない」といった趣旨の回答が返ってきた。

 もちろん、現場の状況はさまざまである。横断歩道の付近で話し込んでいる人たちや、譲る意思を示している歩行者を、「横断しようとする歩行者」と見なすかどうかは、時々の状況によって異なるというのが、担当者の弁だった。

 警察側の視点からすると、法律を運用するうえで、解釈を一律に定めてしまうリスクもあるだろう。

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「歩行者に譲られていれば、横断歩道を通過してよい」と公認してしまえば、「譲る意思をめぐる誤解」が事故の原因となることもあるかもしれない。

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弁護士の見解は

 見方によっては杓子定規とも思える警視庁の見解は、法解釈として妥当なのだろうか。横断歩道におけるドライバーの義務について弁護士に尋ねてみた。

「まず前提として、道交法の第38条は歩行者の優先権を定めるものですが、条文として『かなり強い』規定だと言えます。

 法律の条文には『原則』のほかに『例外』が定められているものも多いですよね。たとえば、クラクションは原則として『警笛鳴らせ』の標識がある箇所でしか鳴らしてはいけませんが、例外として『危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない』という但し書きがあります。

 このように、例外規定は法律の運用に幅を持たせるものですが、第38条にはそれがなく、歩行者側に絶対的な優先権を与える書き方になっています」

 現実のドライバーが持っている認識は「歩行者がいれば止まる」程度のものかもしれないが、法律の文面からは「横断歩道は基本的に止まるもの」という前提が読み取れる。