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暴走族グループに遭遇

 目的地は沖縄の幹線道路であるゴーパチ(国道五八号線)だ。ゴーパチに近づくにつれて、遠くでかすかに聞こえていたバイクのエンジン音が徐々に大きくなる。ゴーパチに出ると、さっそく暴走族グループに遭遇した。ちょうど彼らは暴走中だった。彼らは排気音が爆音となるように改造されたバイクに2人ずつ乗り、公道を徐行運転していた。後ろから後輩たちが小型バイクで追走する。爆音は夜の街に響き渡った。私は一般人を装って追走し、彼らが休憩するときに話を聞くことにした。すると、後方から別の暴走族がエンジンをふかしながら近づいてきた。抗争などのトラブルに発展しそうだと思い、それまで以上に一般人を装って距離をとった。

 先を走っていた暴走族が信号に引っかかり、後ろの暴走族との距離がどんどん縮まる。初日から暴走族同士の抗争に遭遇するのかと思い、あせった。とうとう、ある交差点で、後続の暴走族が前を走る暴走族に追いついた。なにもないことを祈るしかなかった。

 が、抗争は起こらなかった。それどころか、2つの暴走族は合流して一緒に走り出した。たまたま友好関係にあったのだと私は考えた。やがて、目の前の一団が、その前を走る別の暴走族に徐々に近づいていく。今度こそ抗争になると再び緊張した。

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 しかし今度もなにも起こらず、2つの集団は合流して一緒に走り出す。一晩、行動をともにして、沖縄の暴走族はゴーパチで一緒に走るスタイルであることがわかった。彼らの間でこれは暴走ではなく、ツーリングと呼ばれ、異なる暴走族が途中から加わったり、下の世代がV100やV125といわれる(暴走族仕様ではない)小型バイクで追走したりするのが通例となっていた。それは気軽にバイクで走ったり、改造したバイクを互いに披露しあう交流の機会であった。

 この頃の沖縄には、離島やへき地、私立を除くほとんどの中学に、それぞれ暴走族があった。彼らは、マフラーやシートを改造した大型バイクに2人乗りしてゴーパチにむかう。大型バイクを運転するのは地元のリーダー格の先輩で、その後ろに乗って、(小売店の店頭にあるのぼりを失敬し、旗の部分を取り除いた)スティックを振り回すのが中堅のメンバーである。後輩たちは小型バイクに乗って、先輩たちのバイクを追走する。後ろから追突してくるパトカーを防ぐのが主たる役割であった。