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「特需は終わった」

「巣ごもり消費の特需は終わった。原材料費や人件費が高騰して、店舗同士の競争が今年になってさらに激しくなっている」

 取材したネットショップの経営者からは、厳しい声も聞こえてくる。コロナ禍になって急激にDX化を始めオンライン型の商業形態を取り入れた企業も多く、市場の拡大は、同時に競争の激化に繋がっている。

 ネットショップがポイント合戦に勝つためには、どこかで経費を削り、ポイント分の費用を捻出しなくてはいけない。家賃の安い事務所に引っ越し、梱包費を抑えるぐらいであれば、企業努力でなんとかなる。しかし、競争がさらに激しくなれば、次に原材料費や仕入れ価格を削り、最終的に人件費の抑制に手をつけることになる。

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 結果、ポイント還元率を上げれば上げるほど、商品を作る人や現場で働くスタッフの給与は上がりにくくなる。さらに市場の価格相場を崩すことになるので、実店舗で働く人たちまでもの給与を下げることにもなる。そこに生活防衛本能が働き、多くの人がネットショップでポイント還元率の高い商品を買うという悪循環が生まれる。

©iStock.com

世界でも特に安くなりがちな日本のオンライン価格

「世界に比べて、日本の給与は上がっていない」

 衆院選を機に頻繁に耳にする言葉になったが、その根源を辿ると、実は価格競争とポイント合戦に明け暮れるネットショップが要因のひとつになっているという話は、あながち暴論とは言いにくいところがある。

 ハーバード・ビジネス・スクールのアルベルト・カバロ准教授が、2017年に10ヵ国のオンライン価格を調べたところ、平均してオンラインの価格がマイナス4%下がるという調査結果を発表した。その中で日本のオンラインの価格は、マイナス13%も下がっており、他の国に比べて販売価格の押し下げ効果が高い。

 日銀も2018年に家事雑貨・家事用消耗品、衣料などのネットと競合する商材は、消費者物価よりもマイナス0.34%ポイントも値下がりするという調査結果を発表している。3年も前の調査結果なので、コロナ禍を挟んだ今は、さらに物価を下げる力が高まっている可能性は高い。

 もちろん、これらのデータだけでデフレの要因をネットショップに押し付けるのは言い過ぎである。しかし、ポイントという形を変えた安売りは、売り手側にとって大きなストレスになっていることだけは、間違いない。