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お洒落な最先端に向かう時代に、思いきり古臭い方に行こうと思った

「硝子の少年」は、こういう詞だ。  

雨が躍るバス・ストップ 君は誰かに抱かれ

立ちすくむぼくのこと見ない振りした

 

指に光る指環 そんな小さな宝石で

未来ごと売り渡す君が哀しい

 

ぼくの心はひび割れたビー玉さ

のぞき込めば君が 逆さまに映る

 

Stay with me
硝子の少年時代の 破片が胸へと突き刺さる
舗道の空き缶蹴とばし
バスの窓の君に 背を向ける

  透明で壊れそうな少年性。小さな指環の宝石とひび割れたビー玉の対比が象徴するもの。ポケットに手を突っ込んで舗道の空き缶を蹴るという青春映画の古典的な仕草。唇がはれるほどにささやきあった、キスだけに終わらない一途な映画館のラブシーン。絹のような髪とコロンが想起させる女性の変化。痛みが輝く蒼い日々。少年時代という硝子が割れて突き刺さる。割れることから新しい日々が始まってゆく。

 バス停のワンシーンを入り口にそれだけの情景とストーリーが綴られている。

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「新宿の西口が気になってて。あそこに深夜バスが着くよね。スキーバスが多いんだけど、長距離バスが着く。こういう場所って別れはあるよなと。そういう歌を書きたいと思ったことが大きいよね。もう一つは、みんなかっこよくお洒落な最先端に向かっているから、思いきり古臭い方に行こうと思った。僕には今の世の中にこんなもの残ってないよという死語みたいなものの趣味があるんだよね。金色夜叉みたいな恋愛。別れる時に女の子を蹴っとばすくらいの恋愛。僕はそこまでオマージュしてるのね。女の子の代わりに空き缶蹴とばしてるけど(笑)。近田春夫が週刊誌のコラムで『今時、金色夜叉じゃあるまいし』ってケチつけてたけど、『やった』と思った(笑)。『勝った』と思ったよね」

松本隆氏 ©文藝春秋

「3秒くらいよそ見していたら足を引っ掛けられる世界」へ、奇跡の復活劇

 97年7月に発売されたKinKi Kidsの「硝子の少年」は初登場1位、その年の年間チャート2位の大ヒット。彼らにとって最大のヒットとなった。

 松本隆と山下達郎のコンビでは、さらに98年4月発売の3枚目「ジェットコースター・ロマンス」、98年12月の「Happy Happy Greeting」と発売、いずれも1位を記録、“松本隆復活”を印象づけた。

 その時のことを彼はこう言う。

「だって、毎週通信簿をもらってるような状態だったのにいきなり辞めてどっかにフケちゃったわけじゃない。出演拒否してね。5、6年経って戻ってきて席があるかと言ったら普通の社会でももうないよ。99.9%何しにきたの、になる。京平さんと僕がいたのは3秒くらいよそ見していたら足を引っ掛けられる世界ですよ。そういうところに生きてたわけだから、奇跡が起きたと思った。それは嬉しかったですよ」 

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