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 きょう11月28日は、バカリズムの名で活躍するお笑い芸人・升野英知の42歳の誕生日である。1975(昭和50)年福岡県生まれ。バカリズムはもともとコンビとして1995(平成7)年に結成され、2005年の解散後は、ピン芸人になった升野がそのまま名前を継承した。

 ブレイクのきっかけは、升野がピンになってからまもなくして「R-1ぐらんぷり2006」で披露した「トツギーノ」というネタだった。これはフリップをめくりながら、そこに描かれた行為について「~しーの」と説明しながら、一つの流れの終わりは必ず「トツギ(嫁ぎ)ーノ」というフレーズで落とすというもの。コンビ時代より、あるルールにもとづいて展開するコントを得意としたバカリズムだが、「トツギーノ」というインパクトのあるフレーズもあいまって、一挙に世間に認知されることになった。以後も、「都道府県の持ちかた」「贈るほどでもない言葉」など毎回意表を突くネタを発表し、それぞれルールもキャラクターも変えながら、一つの形に収まることがない。

 2014年には竹野内豊主演のドラマ『素敵な選TAXI』(フジテレビ系)の脚本を担当。以来、脚本家としても頭角を現しつつある。昨年は、読売テレビ制作・日本テレビ系の深夜枠で、市川崑監督の往年の名画『黒い十人の女』のリメイク版ドラマを手がけた。同じ枠ではさらに今年4~6月、升野がかつて個人的な趣味で書いていたブログ「架空升野日記」(2008年に書籍化)を原作とする『架空OL日記』が放送され、自ら脚本と主演を務めた。原作は架空のOLが書いた日記という設定だけに、ドラマにおける彼の役もOLで、化粧はしないまでも女装し、ごく自然に同僚たちとたあいもない会話に花を咲かせる日常を演じた。

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『素敵な選TAXI』制作発表

考えてみると、『黒い十人の女』も『架空OL日記』も、あるいは今年9月のフジテレビ系の27時間テレビのために書いたドラマ『私たちの薩長同盟』も、女性たちの会話を軸に物語が繰り広げられるという点で共通する。升野は「女の子苦手芸人」を自称しているが、それにもかかわらず、いや、だからこそ、女子の視点や言動を客観的にとらえ、それを物語に落とし込めるのか。

 ある一風変わったルールや設定のもと展開するという意味では、バカリズムにとってコントもドラマも変わらない。しかし『架空OL日記』最終回のラスト、OLの格好ではない素の升野が、街なかでOLたちとすれ違い、それまでの物語が架空であったことをほのめかすシーンは、コントにはないどこか寂しげな味わいがあった。こうしてドラマという表現手段を得たバカリズムが、今後、どのように世界を広げていくのか楽しみだ。