丼の柄に込められた意味
近頃はラーメン専門店の丼は、和風やロゴ入りなど、店のオリジナルが多くなりましたが、昔ながらの中国由来の柄や文様が入った丼は、今でも町中華でよく見かけますね。それらの模様の代表的なものを紹介します。
「雷文」。ご存知、四角い渦巻2つが結ばれ、それが連なった文様です。中華料理=雷文、という刷り込みがありますね。この渦巻は雷を表し、古代中国より用いられています。雷は自然界における脅威の象徴。その力を借りて、邪気を払うイメージでしょう。ちなみにナルトの渦巻とは関係ありません。
「双喜」(双喜紋)が表しているのは慶事。お祝いごとです。「喜」が2つ並び、誰かと祝い合っている、おめでたい文様ですね。「龍」は恵みの雨をもたらすことから五穀豊穣を意味し、また天子(王)の権威の象徴でもある。龍とともに四霊(四瑞)という伝説上の生物「鳳凰」は、吉兆を表す瑞鳥です。私もこうした文様入りのスタンダードな丼が好きで、「赤巻三つ竜」や「瑠璃白龍」「北京」といった丼を家で愛用しています。
丼の基本形も、簡単にご紹介。
代表的なものが、玉丼、切立(天開)、高台、反丼。これらは別の呼び名もあり、それぞれ前から順に、利休形牡丹、扇形、梅形、百合形。こちらの分類名はいかにも日本的で風流。それぞれに保温性や容量、扱いやすさなど利点は異なり、複数の特徴を兼ね備えた丼もあります。まぎらわしいのが丼の下部を支える円柱部分です。ここも「高台」と呼びます。丼の形状を表す「高台」と同じ表記なので混同しがちです。
佐野実さん(編集部注:ラーメン店「支那そばや」の創業者)は、ラーメン専用丼まで追求しました。持ちやすさ、食べやすさまで配慮した丼を、有田焼の窯元と開発。形状や材質がラーメンの味に与える影響や、口縁(丼の縁)を醬油用と塩用では違う厚みにするなど、その緻密さに恐れ入るばかりです。