4.『狩人の悪夢』
推理作家の有栖川有栖(アリス)は、人気ホラー作家の白布施正都と対談したことがきっかけで、彼の自宅「夢守荘」を訪問することになった。夢守荘には、そこで眠ると必ず悪夢を見る部屋があるという。その部屋でアリスが一夜を過ごした翌朝、夢守荘の近くの「獏ハウス」で、首を矢で貫かれ、右手首を切断された女性の他殺死体が発見される。獏ハウスは、2年前に心臓発作で死亡した白布施のアシスタント・渡瀬信也の家であり、被害者の沖田依子は渡瀬の知人だった。アリスが第一発見者だったため、すぐに友人の火村英生がやってくる。現場の壁には、明らかに男のものらしき手形が残されていた。警察が捜査を開始して間もなく、手形の持ち主と思しき男が判明し、彼が被害者をストーキングしていた疑いもあったことから、事件は早々に解決されるかと思われたが……。
臨床犯罪学者・火村英生はいかにして犯人を追いつめるか? 論理の魅力を堪能できる本格ミステリー。
▼ここが魅力!
同志社ミステリ研究会「〈作家アリス〉シリーズの最新刊である本作は、火村の内面にまた一歩ふみこんでシリーズとしてもさらに厚みを増した。単体の作品としても良作で犯人とのかけひきからは一瞬も目を離せない。
岩田準子「最低限の謎で強力な吸引力。昨今稀有なロジック重視の本格ミステリー」
波多野健「ちょっとした手掛かりが積み重なって謎が解けるというクイーン流の極致に心理的なものが加わり、安心して読めるプロットになっていることに感心」
柳家小せん「散らかった謎の解決編が長い。この長さが愉しい。フーでもハウでもなく、ホワイダニット中心、から一歩進めて『どう追い詰めるか』の会話劇。緊迫感が絶妙」
4.『機龍警察 狼眼殺手』
中華料理店で会食中の男たちが射殺されるという事件が起き、そのうち2人は、中国黒社会と深い関係があるフォン・コーポレーションの社員だった。経済産業省はフォン・コーポレーションと手を結んで、情報通信ネットワークに関するプロジェクト「クイアコン」を推進していたが、それに関わる人物が立て続けに殺されており、今回の射殺事件もその一環らしい。沖津旬一郎部長率いる警視庁特捜部は、捜査一課・二課との合同体制で捜査に当たることになった。だが関係者は次々と殺害され、各方面から圧力もかかるようになる。被害者たちにはバチカンで土産物として売られているカードが送りつけられていたが、これは何を意味するのか? そして殺害の手口から浮上した犯人は、特捜部所属の傭兵ライザや、技術班主任の鈴石緑と深い因縁を持つ人物だった。
警察小説・ハードボイルド・近未来SFなど数々の顔を持つ「機龍警察」シリーズの最新作では、特捜部をかつてない窮地が待ち受ける。
▼ここが魅力!
麻田実「ユニークな兵器が支えてきたシリーズだが今回はそれを封印してもなお波瀾万丈。技術革新が進む現代社会では兵器の革新にも迫られる。その試練をクリアして面白いアクションものになった」
廣澤吉泰「大沢在昌『新宿鮫II 毒猿』を思わせるアクション、逢坂剛『百舌の叫ぶ夜』を想起させる警察内部の陰謀、そして本格物のような殺人予告、とミステリファンが好む要素がてんこ盛り」
古山裕樹「海外の冒険小説・スパイ小説を咀嚼して独自の色を作り上げたシリーズ」