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 告訴状などによると、菜摘さんが通っている大阪市内の小学校の校長名で、菜摘さんの保護者あてに「内科健康診断結果のお知らせ」が作成された(2019年12月13日付け)。この文書には、「校医より『一度、小児科でお子さまの成長についての相談をするように』との指示がありましたので、お知らせいたします。お子さまの身長とその年齢の基準値との比較及び前年からの身長の伸びを考慮して判断されました」とある。しかし、実際には校医から指示された事実はなく、校長自身が作成したものだという。

虚偽の情報が記載された「内科健康診断結果のお知らせ」の一部

「細かい話ですが、19年11月頃、いじめの加害者の男の子が別室指導になりました。私たちが学校にお願いしたのは、例えば、子ども家庭センターに連れて行って、暴力的な指向はないかということを診断してもらい、その上で、家庭できちんと指導してほしかったんです。しかし、何もないまま時間だけが流れていきました。

 その間も、学校からは『いつ、加害者の別室指導を解除しますか?』と言われていました。私たちは『学校が本来やるべきことは、別室指導の解除に向けてちゃんと指導をすること。相手側の保護者にきちんとプッシュするなり、病院などでのカウンセリングを受けたかどうかを確かめることなのでは?』などと言ったんです。

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 それまで一切、“低身長”という話は出ていませんでしたが、11月中旬になって低身長に関する書類作成をしているんです。家庭に問題があるということを言いたいんでしょうね。本当に低身長だった場合、(いじめ問い合わせの半年後の)11月ごろに書類作成をすることがあるのかと、教育委員会に聞きましたが、そういうことはほぼないと。医師は『半年前のことで子どもの診断はできない』とはっきり言っていました」(同前)

虚偽公文書作成罪と公務員職権濫用罪で校長を刑事告訴

 前出の「いじめ重大事態に関する報告書【第1報】」の中には、「12/24 学校と区役所がケース会議を開き、情報共有する」との記述がある。父親が同報告書を個人情報開示請求したことで判明した。この詳細を学校側に求めると、20年4月28日、校長のサイン入りで、学校に行くことへの不安、長期休みになる心配などについて情報共有した旨を文書で回答している。

 しかし、この回答をもとに改めて大阪市に開示請求をすると、「校長が来所した記録及び相談内容についての記録はない」として、「不存在」を理由に開示されなかった。つまり、学校側はそもそも実在しない「ケース会議」をもとに、教育委員会に対して菜摘さんの健康状態などについての虚偽報告をしていたことになる。

いじめの被害を受けた菜摘さん(仮名)

「市役所に開示請求をした前後の1週間の記録も確かめたんですけれど、そんな会議はなかったという返事をもらっています。これでは、“モンスターペアレントが、加害児童を別室指導という形で騒ぎ立てた結果、長期化している”という書類を作り、自分の裁量でなんでもできてしまいます。自分の思い通りに重大事態の報告書を書くため、こういう情報が必要だったんだと思います」(同前)

 20年9月、菜摘さんの父親は、「校長は虚偽の事実についての文書(内科健康診断結果のお知らせ)を作成していた」ため、虚偽公文書作成罪と公務員職権濫用罪に該当するとして、校長を大阪府警に刑事告訴した。府警は告訴状を受理した。

 捜査の結果、22年2月、大阪府警は校長を書類送検した。3月に入ってから、父親は検察庁の事情聴取を受けたという。現在、大阪地検は、校長を起訴するかどうか検討中だ。

 この校長は、現在は別の小学校の校長となっている。筆者の取材に対して、校長は「(書類送検について)いろんな観点があるので、どんなふうに話していいかわからないので、お答えは控えさせていただく」と答えた。また、虚偽の事実を報告したのかという点については、「教育委員会で第三者委員会が動いている。そちらの方で調べていただいている、詳しいことは言えません」と話した。