大阪市内の小学校のいじめ対応が不適切だとして、いじめ被害者・菜摘さん(仮名)の保護者が、市教委の顧問弁護士を懲戒請求している。いじめ対応をめぐって、弁護士の懲戒請求は異例だ。また、関係した校長の懲戒処分も求めている。この問題は、大阪市会教育こども委員会でも取り上げられ、松井一郎市長が「対応が不適切」と指摘している。

大阪市の松井一郎市長 ©AFLO

「家庭に問題があるかのような文書を作りました」

 いじめ被害を受けた菜摘さんの父親は今年6月に、市教委内のいじめ対策委員会に法律顧問として同席していた弁護士を懲戒請求した。8月25日には大阪弁護士会から聴取を受けた。理由は、虚偽の事実が掲載されている市長への報告内容を容認したこと、調査対象にも参加して利益相反であることなどが理由だ。取材に応じた父親はこう話す。

「請求対象の弁護士は、市教委の顧問弁護士の立場か、スクールロイヤーなのかというこちら側の質問に一切答えませんでした。スクールロイヤーであれば、子どもの権利を守る立場のはずです。しかし、その弁護士は、いじめ対策委員会で、市教委の対応が不適切かどうかを調査しています。顧問弁護士であれば、自分で自分のことを調査するようなものです。こちらは調査の正当性を疑っているのに、顧問弁護士かどうかも答えられないのです。

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 懲戒請求は苦肉の策です。公務員が7歳の子に不適切な対応をし、しかも家庭に問題があるかのような文書を作りました。公務員の公務中の不正な対応を追及する術がないのです。市教委にも訴えましたが、学校のやり方を容認していると感じました」

Aに前髪を切られそうになり……

 最近になって、菜摘さんは、Aから受けたいじめ被害のことを両親に話すこともある。

「菜摘はなかなか被害のことを話しませんが、夢を見て、泣き叫ぶこともあります。ただ、つい最近になって話したことがあります。1年生の夏頃、自分で前髪を切ったことがありましたが、それはAに前髪を切られそうになり、あまりにもしつこいので、自分で切ったということです。また、2年生の夏休み前後、Aに追いかけ回されて、女子トイレに逃げこんだけど、中まで追いかけてきて怖かったようです。学校からはトイレでこけて、もらしていたとの連絡はありましたが、そんなことがあったとは知りませんでした。ようやく、過去のこととして話すことができるようになった部分もあります」

取材を受ける菜摘さん(仮名)の父親 ©渋井哲也

 Aによるいじめは、2019年、菜摘さんが1年生の頃から兆候が出ていた。当初のことを振り返る。

「1年生の時の懇談会で、Aと菜摘は言い合いになっていたんです。“追いかけっこ”状態にもなったようですが、理由も状況もわからないでいました。ただ、この当時は、子どもたちの関係は、子どもたちで作っていくべき、そうあってほしいと思っていたんです。教室の自由な雰囲気を阻害したくないと思っていたんです」