その収益源となるのは、ゲーム、映画、音楽などコンテンツの知的財産権だ。これが収益を生み出すアセット(資産)となっている。
創業者の盛田昭夫が会長の時に行った最大の賭けが映画事業への進出だ。1989年、ソニーは総額34億ドル(当時の為替で約4800億円)で米五大スタジオの一つコロンビア・ピクチャーズを買収した。
「当時は、アップルの買収という話もあったらしいけれど、盛田さんは、『アップルみたいなところはいつでも買える。映画会社は買えるときに買わないと買えない。売ってくれるという今が買い時だ』と言っていたそうです」
ソニー初代CFOの伊庭保はこう振り返る。
盛田が狙ったのはコロンビア・ピクチャーズが保有する映画ライブラリー(2700タイトル)、テレビ番組(23000作品以上)だった。
買収から10年後に社長になった野副はこう話す。
「コンテンツの価値って落ちないんです。映画って何度も見るでしょう。それを今はゲームにもできるし、キャラクタービジネスにも展開できる。音楽でも映画でもゲームでもどんどん重なってきて、ビジネスは大きくなるんです。
ソニーピクチャーズのいいところは、トーキー(音声が入った映画)になるか否かという時代から、映画のライブラリー権利を持っていること。どの映画会社もそういうわけではなくて、例えば、パラマウントはけっこう切り売りしている。ビデオ化権、テレビ放映権などをバラバラに売ってしまって、自分たちのボーナスにしたりしてきた。その都度キャッシュは入ってくるけれど、これを買い戻すのは大変なんです」
ソニーの映画事業は、監督する立場にあったソニー・アメリカのグリップが弱かったこともあり長らく経営が安定せず、長年「高い買い物」とみられていたが、今ではそのコンテンツをネットフリックスやアマゾン・プライムに供給することで売り上げを伸ばしている。投資家から見れば、ソニーは日本最強のリカーリング銘柄ということになる。
女神がトーチを掲げるコロンビア・ピクチャーズのオープニング・ロゴは、91年に「a SONY PICTURES ENTERTAINMENT company」に変わり、2014年には、「a Sony Company」に変更された。ソニーのブランディングにも大きく貢献しているわけだ。
東芝はソニーに刺激される形で1991年に伊藤忠商事と組み、タイム・ワーナーに5億ドルを出資したものの、わずか数年で映画業界から逃げ出し、「高い授業料」を払わされるだけで終わっている。