上野にはじめてジャイアントパンダがやってきたのは、1972年のことだ。日中国交正常化を記念して、中国から贈呈されたカンカンとランランである。瞬く間にパンダブームを巻き起こした。そしてそれから半世紀。日本人は半世紀もパンダに長い行列を作り続けてきたのだ。

 まあ、別にそれが悪いということはなくて(筆者も並んだことあります)、そういったわけで上野はパンダの町である。

改札口からして強く主張されている「パンダの町」

 上野駅の山手線のホームから階段を登って空中に設えられたコンコースを出て、入谷改札と名付けられた改札機を抜ける。するとそこにパンダがいる。もちろんホンモノは上野動物園の中にいるので改札前にいるのは巨大な像だ。

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 大切にガラスかアクリルのケースに収められたジャイアントパンダの像が、改札口の目の前に鎮座している。上野はもはや、パンダの町であるということが、改札口からして強く主張されているのだ。

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 そしてこの出入り口は、「パンダ橋口」という。改札口の名前と出入り口の名前が違うというのはわかりにくさの極みだという気もするが、実際に改札前の線路を跨ぐ陸橋がパンダ橋と名付けられているからしかたがない。

 パンダ橋を渡っていけば目の前は上野公園で、東京文化会館の横を抜けてまっすぐ進めば、上野動物園のエントランスが待ち受けている。

 実際には入谷改札を出てパンダ橋を渡らなくても、公園口という出入り口を出るとそのまま上野公園に直結していて、改札からまっすぐ行けば動物園。上野といったら上野公園、そしてパンダという向きは、だいたいこの公園口を使うのが常になっているだろう。

 

 そういう事情もあるからか、入谷改札、すなわちパンダ橋口から外に出ても、ターミナルというほどには人が少ない。パンダ橋を歩いて渡る人なんてほとんど皆無に近く、エスカレーターで地上2階部分のペデストリアンデッキに降りていく人も数人がちらほらいるくらいだ。パンダ橋口は、上野駅の中でもあまり人気のない出入り口なのだ。

 この際パンダに会いに行こうとも思ったが、動物園は事前予約制でふらりとは入れない。東京文化会館の目の前の広場には何やらたくさんの若い人が集まっていて、イベントか何かがはじまるのを待っているのだろうか。なんとなく賑やかな上野公園の雰囲気は、上野の駅を明るくしている要素のひとつだ。