JRのガードをくぐって上野公園や中央通り側に向かうと、そこにも商店街がある。JRのガードに挟まれた細い商店街、そしてヨドバシカメラとガードの間にあるのがご存知アメ横、アメヤ横丁だ。
終戦直後、闇市が入り乱れた一帯を整理して生まれた商店街で、ガラガラ声の店員の呼び込みのイメージが強い。強いのですが、なんとなく、それほど安いわけではないような気がするんですけど、どうですかね……。
いずれにしても、上野駅と御徒町駅の間には線路に沿っていくつもの庶民的な商店街がある。それらの商店街はどれも庶民のための商店街。上野駅が下町のターミナルであるということは、そういったところからも象徴されるのである。
日本を支えた“上京の駅”
上野駅というと、JRだけでなく京成上野駅もあるし、地下鉄の上野駅もある。京成上野駅は上野公園の地下にホームを広げ、出入り口は中央通りに面する。
中央通りの地下には地下鉄の元祖・銀座線。ちょうど京成上野駅の出入り口の前の歩道の通気口からは生暖かい風が吹き上がる。その真下をちょうど地下鉄が通っているのだろう。マリリン・モンローである。『七年目の浮気』である。日本で初めての地下鉄である銀座線は、それだけ地上近くの浅いところを通っているのだ。
つらつら上野駅周りを歩いてきたが、上野駅の本質はむしろパンダでもマルイでもアメ横でもなく、もちろんマリリン・モンローでもない。
やはり上野駅を語るならば、広小路口(マルイの正面)前にある、『あゝ上野駅』の碑であろう。上野駅は、長らく東京の北の玄関口として、東北出身の人びとの望郷のターミナルであり続けていた。
井沢八郎の『あゝ上野駅』は、集団就職で上野駅に上京してきた人たちの心情を歌った伝説の名曲である。上野駅にやってくる集団就職のシーンはドラマや映画でもしばしばお目にかかる。
たとえば、『ALWAYS 三丁目の夕日』では堀北真希演じる星野六子が、朝ドラ『ひよっこ』では有村架純演じる谷田部みね子が集団就職列車で上野駅に着くシーンが印象的に描かれている。東北地方は高度経済成長期を通して東京に労働力を供給する役割を果たした。その象徴が、上野駅だったのだ。
上野駅の中央改札を抜けて構内に入ると、右手に向かって地下に降りれば新幹線、左手の階段を登っていけば山手線や京浜東北線をはじめとする列車に乗ることができる。いま、上野駅を使うときはほとんどその二手でことが終わる。だから、最近になって上野駅を利用するようになった人は気がついてすらいないかもしれない。