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〈自分より格上の相手になんとか一発刺さらないかなあ〉

 大会直前のスランプはどこへやら、匠少年は初戦から4連勝。ベスト4に勝ち進んだ。3人は3年生で2年生は匠少年だけだ。親仲間には○○県の××君が強いという情報にやたら詳しい人もいて、雅浩さんが耳にした情報によると、他の3人の将棋会館道場などでの段位は四段、三段、三段。大会当日の6回目のブログ更新で雅浩さんは、

 もうここまで来ると、誰と当たっても風が吹かない限り勝てない相手なのだが、自分より格上の相手になんとか一発刺さらないかなあと期待してみる。

 と書いている。

 準決勝の相手は四段で、ブログにも優勝候補と書いていたM君(現奨励会三段)。数々の大会で優勝し全国にその名を轟かせていた。

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 振りごまの結果、長男は後手。中二階から対局を覗き込んでいたが、相手の石田流に対し、こちらは銀冠で玉頭を厚くして戦っていた。しかし、8筋を突破される苦しい展開。やっぱり相手が相手だから仕方ないな……と思っていたところ、相手の攻めの隙間を縫って攻勢をかけ、最後は即詰みに仕留めていた。

 これには上から見ていた私もびっくりして、思わず「ウソ?」と声をあげてしまったくらい。(中略)2位以上が確定し、決勝戦をステージ上で行うことができる。(中略)楽屋に通されて、ステージでの歩き方などを短く説明してもらう。親のほうが緊張してしまう。

(2010年8月7日)

 決勝ではプチ前夜祭でも一緒だった埼玉の強豪に敗れて準優勝。ブログには〈二年生の準優勝は、立派、立派〉。そして、〈ここまで遠いところまで来ても、たくさんの友だちがいて、いつもと同じ気持ちでリラックスして臨めたおかげ〉と書かれている。

2010年8月の倉敷王将戦低学年決勝。小2の伊藤匠少年(左)が、ステージ上で対局した(伊藤雅浩さん提供)

大会終了後は念願の松山将棋センターへ

 大会が終わると、岡山駅から瀬戸大橋を渡り、四国・松山へ向かうアンパンマン列車に乗った。車体も車内もアンパンマンとたくさんの仲間たちがカラフルに描かれたJR四国のこの列車には、当時保育園年少だった匠少年の弟が乗りたいと楽しみにしていたのだ。到着した松山では、松山城など観光も楽しんだけれど、匠少年には行きたいところがあった。松山将棋センターだ。