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変わりつつあるリーダーの理想像。

 もちろん感染症拡大抑制それ自体にはさまざまな要素がからんでくるので今後の検証を待つ必要がありますが、それでも、女性か男性かを問わず、今回のパンデミックを通して従来とは異なる「リーダーシップ像」の可能性も見えたように思います。

 これまでリーダーの資質として重視されがちだったのは、力強さや決断力といった伝統的には男性性と結びつけられることの多い要素でした。けれども、伝統的には女性性と結び付けられてきた資質、たとえば弱い人や困っている人へのケアを重視するとか、常に自分が前に出て主張するだけでなく、人の話を受け止めるとか、そういった点で優れたリーダーがいてもいいのではないか、と考える人は増えているように思えます。

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 とりわけ、リーダーには誰かに頼ったりすることも弱さを見せたりすることもない、独立した強さが求められることがしばしばありました。しかし21世紀に入って、むしろ自分が弱いところを認め、他の人に補ってもらうことを厭(いと)わない、協力体制を作ることに優れたリーダーも出てきています。

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 ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相が、就任後に出産して産休を6週間取得することを国民に率直に話し、その間は副首相が首相代行をつとめることについて国民の了解を求めたときの姿勢などは、その一例と言えるでしょう。

「自分についてこい!」と引っ張っていく強さだけをリーダーシップと考えるのではなく、私たちの社会のどういうところが脆弱(ぜいじゃく)で、どういうところをケアしていけばいいのかを一緒になって考え、協力しながら社会をまとめていく力もリーダーシップなのだ、というオプションが増えたことは、いい傾向です。とても弱ってしまっている地球(環境)をいたわる、という視点も、今の時代のリーダーには不可欠ですよね。

ヒラリーからAOCへ。次世代が求めるリーダーとは?

 2016年アメリカ大統領選挙で民主党候補となったヒラリー・クリントンは、学歴、職歴、政治経験すべてに抜きんでたエリートで、初の女性大統領への期待も高まっていました。

 しかし、ジェンダー平等も含む社会的公正や平等の問題に非常に敏感だといわれているレイト・ミレニアル(1990年代生まれくらい)やジェネレーションZ(1990年代後半~2010年代生まれ)と呼ばれる若い世代の多くは、クリントンではなく、彼女と民主党指名を争ったバーニー・サンダースの支持にまわりました。

 クリントンは女性候補ではあっても「恵まれた富裕層の利害にしか関心がなく、経済的格差にコミットしていない」とみなされたのです。