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池袋や大塚で“大量供給”されたワンルーム投資の残酷な“末路”

2022/05/31
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賃貸マーケットの競合で勝てない平成初期のワンルーム

 しかし、不動産投資にあたっては多くのチェックポイントがある。ワンルームの場合は需給バランスと投資家の懐具合だ。郊外の田園地帯で、テナントはあまり見込めないような場所で相続税対策だけに目が眩んで投資したアパートオーナーが、その後、同じようなアパートが周辺に林立してテナントを奪われ、空室に苦しむことがある。実は現在、ワンルーム投資の世界でも、同じことが起こっているのだ。

©️iStock.com

 都内では豊島区の池袋や大塚などで、こうした節税ニーズをとらまえたワンルームマンションが平成バブル期などに大量供給されている。当時のワンルームの企画は部屋も5坪から6坪程度と狭く、水回りであるバス、トイレ、洗面が一室に詰まった3点ユニットバス。

 ところがその後こうした狭小ワンルームは行政から認められなくなり、その後に建設されるワンルームマンションは部屋も広くなり、トイレとバスが分離するタイプがあたりまえになる。棟数が増えるにしたがってテナントの審美眼も磨かれ、平成初期のワンルームマンションは、賃貸マーケットでの競合で負けるようになる。

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節税効果はあるけれど…

 テナントが入らなければ、赤字は膨らんで節税効果は良くなる一方、いつまでも空室では借入金の返済が覚束なくなる。仕方がないので賃料を下げる。フリーレントを長くする。こうなってくると節税効果はともかく、不動産投資としては完全な失敗となる。マーケットの変化に追随できない、収益は下がる、小さなワンルームは時代のニーズに合わないということで排除され始めると、マーケットでのリセールバリューは当然のことだが下落する。

 運用損に加えて売却損まで負わされるのでは、節税効果どころの騒ぎではない。今、そうしたワンルームマンションが池袋や大塚に限らず全国に多数滞留している。滞留、という意味は「売却もままならず放置プレー状態にある」ということだ。

 不動産投資においては売却という出口が塞がれてしまうと、抱え込むしかなくなってしまう。十分な賃料が享受できるのであればまだしも、続々と建設されるワンルームマンションとの競合では、その商品力で分が悪いので家賃は下がる。外国人がワンルームに5人も6人も、などと報道されるが、こうしたサラリーマンたちが買い求めたワンルームマンションである場合が多いのだ。