嫌々食べた記憶がある。しかしいまでは、コブミカンの葉、レモングラス、ニンニクとともに揚げたコオロギは、ビールに最適なおつまみと思うようになった。
日本の居酒屋にある川エビのから揚げに似ている。バッタ、芋虫、幼虫、タケムシ、カメムシ、ツムギアリのさなぎ・幼虫、タガメなどを食べることにも躊躇はなくなった。
というよりも、テーブルに並んでいると自然と手が出るまでにレベルアップした。
「俺のお父さんカブトムシ食べるんだぜ!」
昆虫以外にも、リス、ネズミ、トカゲ、ヘビなども食べる。チャンパーサック県の田舎で食べたツムギアリとヘビのスープは、忘れることができないほど絶品だった。
市場で生きているヘビを購入し、炭火で直接あぶりウロコを取り、ぶつ切りにして酸味が出るツムギアリと塩などで煮るだけのシンプルなスープだが、本当においしかった。
このようにラオスに来てからさまざまな昆虫や動物を食べたが、もっとも不味かったのがカブトムシの成虫である。
首都ヴィエンチャン郊外には、野生動物や昆虫を豊富に取り揃えるドンマカーイ市場がある。そこで友人がカブトムシの雄の成虫を購入し、職場に持ってきた。カブトムシの羽はむしられ油で素揚げされており、塩コショウをつけて胴体部分のみを食べるという。さすがにカブトムシの成虫が出されたときには躊躇した。子どものころに捕まえていたカブトムシを食べ物とは思っていなかったからだ。
ラオスでもカブトムシが一般的に食べられているわけではないが、出されたものはとりあえず口に入れるという考えの私は、目の前に並ぶカブトムシのなかから一匹の角をつまみ、胴体部分を恐る恐る食べてみた。カブトムシの角は、食べるときにつまむためのものではないかと思えるほどよくできている。そして口に含み噛んでみると、胴体部分からジュワーと油のような液が出てきた。とりあえず何回か噛み飲み込んでみると、えらく不味い。いちおう食感はあるが、古い油を吸い取った何かの塊を食べているようだ。これ以降カブトムシは食べていない。というよりも、もう食べなくてよい。
だが、いまではカブトムシを昆虫採集の対象とともに食べ物として見るようになった。そして息子はカブトムシを見ると、「お父さん食べないの?」と私をからかう。また友だちには、「俺のお父さんカブトムシ食べるんだぜ!」と、言わなくてよいことを自慢げに言うようになってしまった。ただし子どもたちはカブトムシが食べられるわけはないと思っており、おじさんがカブトムシを食べたことを信じていない。
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