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職員のボーナスを減らし、一部理事の報酬だけ大幅アップ

 2020年、女子医大が職員の「ボーナス・ゼロ」を宣言したことが話題になった。新型コロナによる経営悪化が理由だったが、他の大学病院は例年並みか上乗せの支給だったため、職員が猛反発。経営陣は社会の強い批判を浴びて方針転換したが、夏のボーナスは前年の半分、冬は前年の6割の支給で、定期昇給はゼロ。結果として2020年度の決算は、コロナ補助金もあった影響で、過去最高益となる約82億の黒字をたたき出している。

 この当時、一部理事の報酬だけ、大幅にアップされていたことも判明した。文科省「役員報酬等調査票」によると、2020年に岩本絹子理事長が得た報酬は、前年から204万円アップの2710万円、丸義朗学長の給与は、303万円アップの1722万円だった。同大・教授の一人が憤る。

「現場はコロナの感染リスクを抱え、必死に患者の命を守っていた。私たちのボーナスを下げるなら、役員も下げるのが常識でしょう」

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 いつから女子医大は職員を顧みない経営方針になったのか。関係者たちに尋ねると、一様に同じ答えが返ってきた。

「女子医大が変わってしまったのは、岩本絹子先生が理事長になってからです」

理事長の帰宅時に職員たちが全員立ち上がって深々とお辞儀

 岩本絹子氏は佐賀・唐津市の出身で、女子医大の創立者・吉岡彌生の一族である。現在75歳。1973年に女子医大を卒業して、8年後に東京・江戸川区に葛西産婦人科を開業、現在も院長を務める。大学教育や研究に関わった期間は短く、開業医としてのキャリアが圧倒的に長い。

 2013年に女子医大に強い影響力を持つ、同窓会の「至誠会」会長に就任すると、翌年には女子医大の副理事長に就いて、経営の実権を握った。

「2014年、女子医大で2歳の男児が鎮静薬を過剰投与され、死亡する医療事故が起きました。患者数が激減、補助金も大幅カットされて、赤字額は約61億円。経営危機に陥った大学の再建役として、白羽の矢がたったのが岩本先生でした」(元職員)

 女子医大に凱旋を果たした岩本氏は、徹底したリストラとコスト削減を断行する。その結果、3年後には黒字化を果たしている。その剛腕ぶりから付いたあだ名は 「女カルロス・ゴーン」。この実績によって、岩本氏は女子医大で不動の地位を築いた。元職員が岩本氏の人柄を振り返る。

「身長150センチに満たない小柄な方ですが、威圧感は半端ない。ミスがあると大きな声で厳しく叱責されます。意に沿わない職員は左遷や降格をさせられるので、皆いつも萎縮していました」

岩本絹子氏(女子医大HPより)

 女子医大に勤務していた医師は、「異様な光景」が忘れられないという。

「岩本先生の帰宅時に、フロアの職員たちが全員立ち上がって、深々とお辞儀をする。エレベータは岩本先生がすぐ乗れるように停めて待たせていました。職員に聞くと、これがいつもの習慣になっているそうです」