日本人の市民運動家が入ってくると日本の一般市民やマスコミのウケが悪くなるという懸念も、そもそも主催グループの大多数は、問題の所在それ自体を理解できていないようだった。考えてみれば、いくら優秀な留学生でも、異国の社会のかなりハイコンテクストな市民意識を理解することは容易ではないはずなのだ。
台湾と香港から伝授されるノウハウ
屋外での集会が終わった後の「基地」には、台湾人の若者や、香港デモの日本での代表者のウィリアム・リーとその仲間が慰労にやってきていた。
往年の活動では中国大陸とは感情的なしこりも強かった香港デモのメンバーは「われわれが共闘できる部分があれば共闘したい」と、やや歯切れが悪い様子もあった。ただ、活動が盛り上がっているときの心得など過去の経験を流暢な標準中国語で熱心に説明する様子に、主催グループの中国人の若者たちは真剣に聞き入っていた。
「よかった。今回の経験を糧にこれからも頑張るぞ!」「次は12月○日の池袋だ!」
翌朝になっても、彼らが加入している主催グループの指導部のSNSコミュニティでは喜びの投稿が絶えなかった。興奮して眠れなかった人も多いようである。逆に言えば、集会であぶりだされた問題点については、必ずしも冷静な総括はなされていないようだ。
11月24日のウルムチでの火災発生以来、中国の主要都市各地で発生した抗議デモは、わずか数日で政府当局側が厳戒態勢を敷くようになり、急速に勢いを失いつつある。ただ、ゼロコロナ政策のみならず習近平政権や中国共産党の統治にまで大きな批判の声が上がった事実は、近い将来、別の大きな政治変動の伏線になるような気がしてならない。
果たしてそのときまで、白紙運動で形成された若者の熱気と政治的関心は残り続けるのか。そして中国の変化になんらかの作用を及ぼし得るのか。立ち上がった留学生たちのつたなさや危うさも含めて、もうしばらく静観したいところである。