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 また、これまた主催グループとは無関係な、極端だったり目立ちたがり屋だったりする中国人の抑え込みにも失敗していた。中国の各地域分裂と四川省の独立を訴える謎の活動家が巨大な旗を出して演説スペースの背後に陣取ったり、また英領時代の香港旗など、たとえ体制に批判的な中国人でも一般的には距離を置くようなアイコンが登場したりするのも止められなかった。

集会の中心部を占拠してしまったさまざまな活動家の旗。テレビ局が映像を作りにくくなるため、本来の目的の達成を考えるならよくないだろう。©Soichiro Koriyama

 そもそも今回、白紙運動の集会現場にやってきた一般の在日中国人は、ウルムチ火災などでのゼロコロナ政策の犠牲者を純粋に追悼したい人から、政策を生み出した習近平の独裁体制に憤慨して中国共産党や中華人民共和国を健全化したいと考える人、そして党の打倒を考える人まで、立場に相当なグラデーションがあった。

 日本に置き換えれば、同じ「野党」勢力でも、体制に肯定的な国民民主党から公安監視対象である新左翼セクトまでいろいろいるのと同じことである(なのに集会で新左翼の旗しか出ていなければ、一般市民は違和感を持つだろう)。

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準備段階での計画は「さすが」と思ったが、押しの強い市民運動の活動家の参加を押し留めたり、現場で実際にコントロールしたりできるかは話が別だった。©Soichiro Koriyama

 なので、実は「基地」でのミーティング段階では、会場を細かく分ける計画が出ていた。すなわち、ルミネ側から見て右に行くほど穏健エリア(温柔区)、左に行くほど過激な政治主張をおこなうエリア(熱血区)を設定。いっぽうで香港や各少数民族の独立運動家や、それを「支援」する日本人市民活動家など各種各様な人たちは、さらに左側に作る「世界社区大団結区」に入ってもらい、穏健に追悼したい人たちと過激な勢力が重複しないよう配慮する……はずだが、結果的には、集会会場の全体に過激な旗やプラカードが配置されることになった。

声を上げるだけで感極まる

 当然、このゴチャゴチャ感に不快感を持った人はそれなりにおり、主催グループに協力した別の穏健派の参加者も、集会後にTelegramに否定的な意見を書き込んでいた。私の身辺を観察しても、日本在住歴が長くて日本社会の「ダメな市民運動」のテクストを知っている中国人ほど、集会の光景を「気持ち悪い」と嫌がっていた。

 ただ、現場を見ると、それでも喜んでいた在日中国人もかなり多かった。中国共産党や習近平の下野を求める声は、過激エリアだけでなく穏健エリアからも盛んに上がっており、しかも何度も繰り返される。穏健エリアでは「自由万歳」という叫び声も多かった。白い紙や、自作らしきさまざまなプラカードを持って立っている人も数多い。

穏健エリア。香港や台湾のデモではおなじみの、自分の思いを付箋に書いて貼り付けるレノンウォールも大人気だった。©Soichiro Koriyama