「『自分とおなじ考えの仲間がこんなにいたなんて知らなかった』と、感極まって泣き出している女の子がいた。同行していた彼氏がなぐさめていた」
とは、会場にいた私の友人の証言だ。そもそも、この日の新宿駅南口に集まっていた若い中国人のおそらく8~9割は、これまで自由な政治集会に参加したことも、中国共産党や習近平への非難を群衆が口々に叫ぶ姿も見たことがない(後者については、日本人の私ですら3日前にはじめて見たばかりである)。
それどころか、彼らにとっては「中国政府に異議を唱える一般市民の中国人」という存在すら、リアルではほとんど見たことがないレアポケモンのような人たちだったはずだ。なのに、集会の現場にはそういう人が数百人もいたのである。
ゆえに、本来ならば多くの中国人は抵抗感を覚えるはずの東トルキスタン旗や英領香港旗がひるがえっていようと、日本人の市民運動家がのさばっていようと、溢れ出る感情の洪水でそんなものは見えていない人が相当いた。
彼らは「習近平下台(習近平は辞めちまえ)」とか「要自由(自由をよこせ)」とかをみんなで声を合わせて叫べるという事実に、すでに感動している。それは姿を見ていても伝わった。
主催グループは、“とにかく満足”
「今日の活動を100点満点で総括すると? うーん、85点かな! こんなに多くの人が来てくれるなんて思わなかったよ! やりがいがあったし、感動したなー。残念だったのは、ちょっと演説がゴチャゴチャしちゃったことだけど、いやでも、感動したよ!」
集会を終えた後、「基地」に戻ってきた主催グループのメンバーの多くは、かなりハイテンションだった。私が「今日の点数は?」と尋ねると、多くの人は80点台以上をつけていた。
開始前のピリピリした雰囲気とは異なり「メシいくぜ!」みたいな明るい声も各所で上がっている。大部分が20代前半くらいの青年たちが、異国で生まれてはじめての政治集会を取り仕切ったところ、大量の賛同者と日本の大メディアの記者が集まってきたのだ。興奮するのは当然だろう。
「会場でチベットやウイグルや香港の旗が出ていると、ただ追悼だけしたくてやってきた一般人は気まずいんじゃないですか? 彼らは分離独立は支持していないでしょう」
そう尋ねてみたが「別によくないですか」みたいな返事が多かった。実のところ、穏健派がリーダーだった11月27日の新宿駅西口の集会と違って、30日の南口の集会の母体は比較的急進的な考えのグループであり、中国共産党の嫌がることはなんでも大目に見る傾向がある。