ジョリー サウスカロライナ大学に入学するまで、ほかの人と問題なく話せると感じることはありませんでした。大学1年生の終わり頃まで、知らない人たちに会ったり、新しい刺激を受けたりすることに強い抵抗を感じていました。でも、その1年生の時に大学の研究プログラム、キャプストーン・スカラーズ(※6)に参加して、以前より人と話す機会が大幅に増えたんです。
最初の学期にフレッシュマン・セミナー(※7)を、2学期にはリーダーシップ・コースを受講して、そこでも人とたくさん話しました。でも、みんなとてもいい人たちだったし、フレッシュマン・セミナーもリーダーシップ・コースも同じ教授に指導してもらえたから、すごくありがたかったです。その教授は僕の話をうまく引き出してくれましたし、よく面倒もみてくれました。
「デイジーを見ると、多くの人が僕に話しかけてくれました」
ジョリー もうひとつ、1年生の学期が始まる直前に、介助犬のデイジーを飼い始めたことも大きかったです。学生たちは犬を家に置いてきていたので、みんなさびしがっていたようです。どういうわけかみんなデイジーみたいな犬を飼っていたみたいで、こんなふうに声をかけてくれました。
「デイジーは僕の子犬みたいだよ」
「どんな犬なの?」と僕はたずねました。
「チワワだ」
「え、全然違うじゃん。デイジーはチワワより20キロ以上重いよ」僕はそんなふうに言いました。
時々そんな面白い会話を楽しんでいましたけど、そのうちみんな次々に話しかけてくれたんです。うれしかった。僕は自分から話すのがあんまり得意じゃないから。1年生の学期が始まるまで、知っている人以外の人と話すことはほとんどありませんでした。そんな僕をデイジーが変えてくれたんです。デイジーを見ると、多くの人が僕に話しかけてくれましたから。
それから1年、あまりやりたくなかった言葉の練習もたくさん積みました。でも、やってよかったです。だって、そのおかげで指導教官のジーン先生に勧めてもらい、海洋科学クラブに入ることもできたんですから。2年生の時は海洋科学クラブで活動しました。すばらしかったですし、楽しんで勉強できました。3年生になる頃には、提案されなくても自分で何かを進んでするようになりました。ものすごく遅いですけど、ひとりでできるようになったんです。進歩したんですね。かなりスタートが遅くなりましたけど、僕の人生の旅はここから始まりました。
最低ラインから始めましたけど、今はさまざまな人たちとも話をすることができます。あらゆる環境で、初めての相手でも、いろんなタイプの人たちと話ができます。動揺して何もできなくなるということはありません。
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注1 日常で必要となる「食事」「洗顔」「料理」「字を書く」などの応用的動作能力や、地域活動への参加、就学・就労といった社会的適応能力を維持・改善し、「その人らしい」生活の獲得を目的に、リハビリテーションを行う専門的治療のひとつ。精神や身体の障がい者に適当な軽い仕事を与えることで身体的、精神的、あるいは発達に障がいのある人々の日常生活活動と作業スキルの回復や維持を図る。患者のメンタルケアも担う。
注2 日常生活の自立をリハビリテーションの分野でサポートする専門的治療のひとつ。「立つ」「歩く」「座る」「寝る」などの基本的動作能力の回復・維持を目的に、運動やマッサージ、電気刺激や温熱などの物理的手段を通して、患者の筋力や関節の機能回復を目指す。身体機能のうち、大きな動きの「からだのリハビリテーション」のみを担い、精神的な部分は担当しない。
注3 地元の組織が特に未就学児童向けに指導する教室。
注4 シェークスピアの喜劇(1595~1596年頃初演)。夏至の夜には妖精の力が強まり祝祭が催されるという伝説を下敷きに、妖精の森で逢引する2組の男女と芝居の練習をする6人の職人たち、妖精王オーベロンと女王ティターニア、狂言回しの小妖精パックが入り乱れ、ドタバタ劇が展開される。
注5 生データを処理して得られる情報単位のこと。1個(ジョリーの言葉でいうならビーズ1個)のⅩ値と1個以上(のビーズ)のY値を含む場合はグラフの値そのものとして表されることになる。
注6 キャンパスの文化を学び、大学生活を充実したものにするために、サウスカロライナ大学内のキャプストーン・ホールかコロンビア・ホールに住み込んで、さまざまなことを学ぶ。成績優秀者しか基本的に参加できない。https://sc.edu/about/offices_and_divisions/capstone_scholars/index.php
注7 1年次の最初の学期に履修するセミナー形式の授業。新入生が大学の勉強はど
ういうものかを学び、大人数の講義形式の授業以外に、少人数のセミナー形式の授業を経験する。
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