「形式だけ取り繕われても到底納得できるはずがありません」
事故に遭った隆雄さんと倫代さんは、2021年3月に長年営んできた新聞店をたたんで、第二の人生を謳歌しようと積極的に生活をしていたという。
「両親はこれまでずっと苦労して私たちを育ててきた分、これからは自由に好きなことを楽しもうとしていました。父の趣味であるお城巡りや御朱印集めなどで毎月のように全国を二人で旅行していました。すでに『百名城』を制覇し、あと19カ所で『続百名城』も制覇するところでした。事故の1カ月前には立山連峰に登頂し、事故がなければクルーズ観光や諏訪への旅行もするはずだったんです。
それなのに、なんの落ち度もなく、ただ普通に生活していただけの両親は突然、事故に巻き込まれてしまいました。
真摯に反省と謝罪をしてくれれば、私たち家族の気持ちも少しは収まったかもしれません。しかし、被告は事故という現実を直視せずに、私たちの感情を逆なでするばかりです。被告から謝罪の手紙こそ来たものの、日付は第2回公判の直前で、しかも宛先は裁判に参加している被害者参加人の私と弟に対してだけでした。一番の被害者である母宛てには一切謝罪はありません。本来なら両親に宛てて謝罪しなければならないはずです。形式だけ取り繕われても到底納得できるはずがありません」
残った一縷の望み
両親の事故を思い出すと「動悸が治まらず、怒り憎しみ悲しみで感情がぐちゃぐちゃになる」という星野さん。しかし、一縷の望みは残ったという。
「一時は意識不明で脳死も覚悟していた母の意識が回復しました。事故直前だけでなく、その日の記憶は丸一日ないようですが、意思の疎通もできますし、文字も読めます。お医者さんからもびっくりするほどの回復力と言われました。今後、どんな後遺症が出るか予断を許しませんが、いまは懸命にリハビリをしている最中です」
前出の岩瀬被告の弁護人は、事実関係の問い合わせに〈刑事事件に関連する事項であるため、お答えいたしかねます。〉とだけ回答した。第3回公判は3月8日に開かれる。情状証人が証言台に立ち、星野さんの意見書も読まれるという。