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家族よりもひとりが大事。だけど…
家族をテーマにしていたので誤解されがちだが、橋田は「家族の絆」を重んじるのではなく、家族の中にあっても一人一人が自立すべきだと強く考えていた。だから、橋田のドラマでは家族同士がぶつかり合っていたのだ。
03年に出版したエッセイ集のタイトルは『ひとりが、いちばん! 頼らず、期待せず、ワガママに』。晩年はひとりであることを積極的に受け入れ、それを謳歌していた。
橋田の人生をなぞっていくと、家族から逃れ、ひとりで奮闘し、家族を知り、またひとりになったことがわかる。橋田を追悼するドラマのタイトルが『ひとりぼっち』なのは、とてもふさわしい。
とはいえ、周囲に対して心を閉ざしていたわけではない。人生の要所要所で人との出会いに恵まれている。1歳年下で橋田に「妹」と呼ばれていた石井は、自著『歳はトルもの、さっぱりと』の中で橋田についてこう記している。
「人間は、決してひとりぼっちではない。誰かに支えられて、ここまでくることができた。だから、『ありがとう』と言いたい。それが、橋田さんが最後に伝えたかったことだったのではないでしょうか」
家族よりもひとりが大事。だけど、ひとりぼっちではいられない。橋田壽賀子に捧げられるドラマから、我々が学ぶことも少なくなさそうだ。
【参考】
『道をひらく言葉 昭和・平成を生き抜いた22人』(NHK出版新書)
「私の履歴書 橋田壽賀子(脚本家)」(日本経済新聞)