4月9日、相葉雅紀主演のスペシャルドラマ『ひとりぼっち ―人と人をつなぐ愛の物語―』(TBS)が放送される。両親と姉を相次いで亡くし、天涯孤独となって心を閉ざしていた主人公の青年が、とある女性と出会ったことで変化を遂げていくという物語だ。

 同ドラマのプロデューサーを務めるのは、現在96歳の石井ふく子。『渡る世間は鬼ばかり』(90年~19年・TBS)などのヒット作を石井とともに手がけた盟友であり、2021年に逝去した脚本家の橋田壽賀子に捧げる作品であることが発表されている。

 共演者には『渡る世間は鬼ばかり』や橋田の代表作『おしん』の映画版(13年)などで出演していた上戸彩のほか、角野卓造、中田喜子、藤田朋子、えなりかずき、ナレーターの石坂浩二ら『渡鬼』出演者の面々や、『おしん』(83年・NHK)に主演した小林綾子らが顔を揃える。“橋田ファミリー”の中心人物、泉ピン子が出演しないことも話題になった。

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 それにしても、大家族ものである『渡鬼』をはじめ、橋田作品といえば「家族が主体のホームドラマ」という印象が強い。大河ドラマ『おんな太閤記』(81年・NHK)も“戦国ホームドラマ”の異名を持つほどだった。それなのに橋田に捧げるドラマのタイトルがなぜ『ひとりぼっち』なのだろうか。答えは、橋田の人生にある。

「家族もの」をたくさん書いてきた橋田壽賀子という脚本家の人生

©文藝春秋

 橋田は1925年(大正14年)、日本統治下だった現在の韓国・ソウルに生まれた。四国生まれの父親は鉱山を経営、母親は土産物屋を切り盛りしていた。小学4年生になる直前、母親と一緒に大阪・堺市に転居する。日本の教育を受けさせるためで、父親とは離れ離れになった。

 母は一人娘を溺愛したが、橋田自身は過保護な母親を嫌っていた。出演した番組では当時のことをこのように振り返っている。

「ずっと母と子ですから。母子家庭ですから、ずっとこう(視野が狭い)なんですよ。私のことしか見てない。それがすごく重かったんですね。なんかもう、お母さん、母親の愛情から逃げたい、もっと自由になりたいとその一念ですね」〈『スタジオパークからこんにちは』(95年・NHK)〉