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結婚した橋田はたちまち嫁姑問題に直面する。嘉一は極度のマザコンだったのだ。「ドラマは家庭の中にある」と気づいた橋田は、その経験を活かして書いた『となりの芝生』(76年・NHK)で国民的な嫁姑論争を巻き起こした。やがて“戦争と女”をテーマに据えた『おんな太閤記』、貧しさに耐えた女性の生涯を描いた『おしん』などの大ヒット作を連発する。
「あなたはうちの墓に入れない」
89年、夫の嘉一ががんで死去。たったひとりの家族を亡くした橋田は天涯孤独の身となった。夫のことは愛していたが、夫の家族から「あなたはうちの墓に入れない」と言われて夫方の家との縁は切れた。
夫の死の翌年にスタートしたのが『渡る世間は鬼ばかり』である。大家族を舞台に、家族間の揉めごとや現代人が直面する問題を思いつく限り入れ込んだ。
家族をテーマにしたホームドラマをライフワークとして書き続けた橋田だが、家族のしがらみはとことん嫌っていた。出演したテレビ番組では、「家族の絆」という言葉を持ち出したインタビュアーに対して次のように話している。
「私全然そんな、孫がいたり、嫁さんがいたり、息子がいたり、そんなの絶対嫌です。(中略)大家族はつまんないよって話じゃないですか、本当に。自立しなさいと。大家族にいても一人一人、自分は一人だということを思って、それでみんなと暮らしなさいっていうのがテーマなの」〈『ETV2001』「老いをどう生きるか」(01年・Eテレ)〉