固い、真面目だけが「ドキュメンタリー」じゃない! 注目のドキュメンタリスト3人が語り合う後編は、日本のドキュメンタリーが抱える大問題、そして必見の最先端ドキュメンタリー作品について語り合っていただきました。(前編より続く)
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なぜ、ラーメンをドキュメンタリー作品にしたか?
土方 大島さんがプロデュースした最新作『ラーメンヘッズ』は、千葉県松戸市にある日本一のラーメン屋「とみ田」を中心に、日本の「ラーメン狂」を記録した映画です。どういうきっかけで製作されたんですか?
大島 アメリカのデヴィッド・ゲルブ監督の『二郎は鮨の夢を見る』というドキュメンタリー映画があるんです。これを観たときに単純に悔しいって思ったんですよ。日本人の手で日本の食文化をきちんと撮ってみたいって。
土方 ラーメンは日本の食文化を言い尽くしていますもんね。
大島 でもラーメンですからね、もう、何の問題提起もない作品です(笑)。「沖縄で起きていることに比べたらラーメンなんて」って、思う人はたくさんいると思います。
佐々木 いや、あえてラーメンをドキュメンタリー作品にすることが重要なんですよ! そこから「日本人とは?」という問題提起も立ち上がるわけですし。「ドキュメンタリーだから大切なことを扱っているので、多少つまんなくても、テンポが悪くても、大事な問題だから我慢して見ましょう」というのは不健全。「面白い」と「ドキュメンタリー」は十分、両立すると思いますから。
プロデューサーは何をすべきか?
土方 大島さんは『ラーメンヘッズ』にプロデューサーとして関わっていますが、どういう形で製作に関わったんですか?
大島 製作当初の段階から、誰に見せるか、どういう風に見せるかということは重乃康紀監督と話し合って、海外でむしろ観られるような作品にしようと方向を固めるところからでしたね。土方さんの上司になる阿武野(勝彦)さんは、どういうプロデューサーなんですか?
土方 現場にすごく敬意を払ってくれる人ですね。いつも「全員、番組を私有しろ」って言ってくれるんです。ディレクター、カメラマン、音声、照明、編集それぞれのスタッフが「自分で作った作品だ」って思えるように神経を遣ってくれています。そのために、阿武野も自分の関わり方を、その作品、チームによって変えていて、野放しにしたほうがいいと思ったらそうするし、介入したほうがいいという時は的確に指示をしてくれます。
大島 それで、最後には作品がもう一段階上に仕上がるようにしてくれるわけですよね。それは素晴らしい。
佐々木 その関係は理想的だと思います。マネジメント・管理業務のプロデューサーと、監督・演出業務のディレクターの仕事は本来、違うはずなのに、なぜかプロデューサーが上、ディレクターが下という関係性になっていたりして、いつの間にかプロデューサーが番組を作ってるような顔をすることがしばしばあったり……。