ふるさと納税でお米を
加谷 消費者物価指数が4%上昇し、食料品はもちろんのこと、電気やガス、ガソリンの価格も急騰し、消費者のお財布を直撃しています。原田さんが節約雑誌に出会った15年ほど前なんかは、Aの値段が上がったから代わりにBを買おう、など選択肢があったんですよね。ところがインフレであらゆるものの値段が上がってしまい、逃げ場がない。となると、同じ3000円でもどう使うか、単なる「より安いものを買う」などでなく、節約への考え方も切り替えなければいけないでしょうね。原田さんご自身は、今、3000円あったらどう使いますか?
原田 何もかも値上がりしている今、ということで考えると、何のひねりもありませんが、ふるさと納税で「お米」をもらいます。というのは、貯金ができるかどうかというのは、結局、住居や食費、保険などの固定費の部分をどう抑えていくかがポイントだからです。
食生活にもよりますが、月に5キロないし10キロのお米があれば、何があっても1カ月は食べていける。ふるさと納税は2000円の自己負担はかかりますが、同じ納税額で返礼品の現物がそっくり手に入るわけですから、今や「やらなきゃ損」と言える節約術です。年金暮らしなどでふるさと納税ができない方もやはり、3000円でお米を買ってほしい。
加谷 非常に現実的なお話ですが、堅実でいいと思います。物価高の今、お金で買えるものの持つ意味は確実に変わっています。これまでは経済が成長しているから、収入さえ増えれば欲しいものは何でも買うことができ、そのことが、人々が働いてお金を得ることへのモチベーションになっていた。翻って今の日本は、恒常的な不景気で収入は上がらず、それに物価上昇が加わるという状態。まさに「働けど働けどなお我が暮らし楽にならざり」で、一生懸命働いてお金を稼ごうとか、それで楽しいことにお金を使おうといったモチベーションを持ちにくい世の中になったと思います。これでは皆が疲弊するばかりです。
(本稿は2023年3月20日に「文藝春秋 電子版」で配信したオンライン番組をもとに記事化したものです)
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加谷珪一氏と原田ひ香氏の「三千円の幸せな使いかた」全文は、「文藝春秋」2023年6月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。