過去にも関西支社で出勤記録を改竄
関西支社管内にあるヤマト運輸のサービス残業の歴史は10年以上前にさかのぼる。
ヤマト運輸は2007年、大阪南労基署から関西支社がドライバーのサービス残業や出勤記録を改竄したとして是正勧告を受けた。同社は過去2年さかのぼり残業代を支払っている。
この問題に関して、ヤマトホールディングスの木川真社長(当時)は、日本経済新聞(2012年3月2日夕刊)で、
「『時短による労働環境の改善』と『生産性向上によるコスト削減』という二律背反に見える命題解決のために、社長直轄のチームを立ち上げました。(中略)(違法労働の)流れが変わるのに2年は短かったと思います。労基問題での指摘を逆手にとって改革を進めたことで、いまの(労働問題のない)当社があるんです」
と語り胸を張った。
しかし現在、同じような労基法違反の問題が同社の関西の支店で起こっている。
心身にかかるプレッシャーが大きくなった
現場が依然として疲弊しているのは関西だけの話ではない。
筆者が取材した関東で働く同社のドライバーはこう話す。
「上からは休憩を取れ、遅くとも午後7時には支店に帰ってこい、などといわれますが、そんなことをしたら、明日に荷物が残ってしまいます。それが積み上がって自分で運べないようになれば仲間に迷惑をかけます。それを避けたいために、1個でも多く配ろうとしてしまいます。忙しい時は、休憩を取る余裕がありません。
それに、長時間労働の元凶となっていたアマゾンからの最終便(午後4時、5時以降の配達便)については、配達をしなくていいことになりました。しかし、そのほとんどは翌朝の荷物に回されるだけです。去年と比べると、負担が減ったというより、時間管理が厳しくなった分、心身にかかるプレッシャーが大きくなったと感じています」
ヤマト運輸は、昨年2月に働き方改革室を立ち上げ、4月に働き方改革の取り組み方針を発表した。しかし、それ以降も、兵庫県の西宮市で労働時間の改竄が見つかり、西宮労基署から是正勧告が出たり、福岡労働局が9月に博多北支店のドライバーに残業代を支払っていなかったとして、同社と同支店の幹部を労働基準法違反容疑で福岡地検に書類送検したりした。さらに、10月には、厚労省が発表する“ブラック企業リスト”にヤマト運輸が加えられた。
前出の青木氏はこう話す。
「確かに、ヤマト運輸は昨年一定額の未払い残業代を支払いました。しかし、まだ法律で定められた労働環境になっているとは思っていません。われわれのところにも、ヤマト運輸の別の支店のドライバーから同じような相談がきていることを勘案すると、改革は道半ばととらえています。今後とも同社には、継続的に労働環境の改善を求めていくつもりです」
一連の是正勧告についてヤマト運輸に質問状を送ったが、広報戦略部の藤岡昌樹プロジェクトマネージャーは、「いずれの勧告についても既に是正済みであり、是正報告書も受理していただいていることなどから、当社としては現時点で特にコメント等をさせていただくことはありません。当社は『働き方改革』を経営の中心に据え、引き続き全社をあげて労働環境の整備と法令遵守の更なる啓発に努めております」と回答した。
ヤマト運輸が働き方改革室を立ち上げてから、1年が過ぎた。しかし、その改革を成し遂げるにはまだまだ課題が山積している。
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