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 ヤマト運輸は昨年、違法なサービス残業があったことを認め、過去2年間にさかのぼり、同社の約6万人のドライバーに総額230億円のサービス残業代を支払った。

 同社は昨年2月に社内に働き方改革室を設置した。アマゾンなどのネット通販企業の荷物を、採算割れを起こしかねない低運賃で引き受けて業界シェアを高めてきたことが、労働現場にひずみを生んだという理由からだ。その後、「労務管理の改善と徹底」や「宅急便総量のコントロール」、「宅急便の基本運賃の改定」などを柱にした働き方改革を進めてきた。

現場の負担はどこまで軽減しているのか

 ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスの山内雅喜社長は、昨年4月の記者会見で、どうして大規模な未払い賃金が発生したのかと問われ、

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「荷物が増える半面、労働需給が逼迫して人員を充足できておらず、第一線にしわ寄せがいっていた。対策の遅れが問題だった。目が行き届かなかったことを反省している」

 と答えている。

2017年4月、働き方改革について説明するヤマトHD・山内社長とヤマト運輸・長尾裕社長 撮影/筆者

 実際、荷物の総量を抑制したため2018年1月までの取扱個数の実績は、昨年の同時期と比べ8%ほど落ちている。また、親会社のヤマトホールディングスの第3四半期の決算は、値上げが奏功し、上半期の赤字から脱し、黒字に転換した。それに伴い株価も回復基調にある。一見すると好調に推移しているようにも見える。

 しかし、現場の負担はどこまで軽減しているのか。

ヤマト運輸の西大阪主管支店内に貼り出された新聞

 昨年12月、ヤマトの西大阪主管支店の労働組合が貼り出した新聞の言葉が現状を的確に現している。

「(働き方)改革を進めている今年の繁忙期だが、安全の確保、法律の遵守はできているのか。何より社員は人間らしい生活ができているのか。正直なところ、現場はまだまだ追いついていない。物量が10%減ったところで、2年前や3年前の数字と大差なく、すべての異常が正常になるわけではない。働きやすい職場というには、まだまだ社員一人が抱える仕事量が多すぎる」

 そうした労働者側の根強い不安があるにもかかわらず、西大阪主管支店のある支店長は、メールで配下のドライバー全員宛にこういう檄文を送っている。

「繁忙期も(ドライバーの配達)個数管理はシビアにいきますから、しっかり個人別に配達生産性を維持して下さい。(中略)12月は、SDの配達取扱をしっかり確保する計画にすること」

西大阪主管支店の支店長からのメール