大阪駅から、ご存知「新快速」に乗ってJR神戸線を西に向かう。大阪駅を出発した電車はすぐに淀川を渡り、またすぐに続けて神崎川を渡る。そうしてものの5分で最初の駅に停まる。その駅は、尼崎駅だ。
尼崎といえば、言葉を選ばずに言えば猥雑な下町、多少気を使った言い方をすれば、庶民的な町といったイメージがよく知られている。阪神タイガースの優勝マジックが開幕前に点灯するのも、尼崎の商店街だ。マジックナンバーとはそういうもんじゃないなどというツッコミは野暮の極み。そういうバカバカしいことを楽しむくらいの余裕はあったほうがいい。何しろ阪神タイガース、18年も“アレ”していないんですからね。
「尼崎」には何がある?
それはさておき、尼崎。新快速に乗って尼崎駅にやってくると、先入観ですり込まれた尼崎のイメージが、必ずしも当たってはいないのではないかと思えてくるのだ。何しろ、駅前にはいくつも背の高いマンションが建っているし、映画館も入っているような大型商業施設もある。平日の昼間からたくさんの人が行き交う駅の周りにも、阪神帽をかぶっている人も、タイガースの法被をまとっている人も、どちらも見当たらない。
タワーマンションに住んでいる人が庶民でないとはさすがに言わないが、やっぱり“尼崎”のイメージとはちょっと違う。世間一般に流布している尼崎のイメージは、実は全くの間違いだったのではないだろうか。
とはいえ、早々に結論を出すのはよろしくない。なので、少し尼崎駅の周りを歩く。
尼崎駅前後の区間のJR神戸線は、だいたい東西に線路が敷かれている。なので、駅の出入り口は南北にある。地図を見ると、北が潮江、南が長洲という地名を与えられているようだ。タワーマンションの類いが建っているのは北口なので、とりあえず北口に出てみることにする。
改札口に挟まれた自由通路を歩いて北口に出ると、ロータリーを取り囲むようにペデストリアンデッキが広がっている。駅前の商業施設やビルには、このデッキを歩いて行けばそのままたどり着けるという按配だ。
まあ別にこのあたりはわざわざ特筆するようなものでもなく、日本全国どこでだって見かけるペデストリアンデッキなのだが、圧倒的な背の高さを誇るビルに見下ろされながらペデストリアンデッキを歩く。やっぱり、思っていたのとはちょっと違う尼崎駅前である。