全国でも珍しい“絵馬師”を名乗る永崎ひまるさん。絵馬の文化、意義、作り方を普及してきた功績により、平成27年度神道文化賞を受賞。伊勢神宮の絵馬を始め、近くは去年夏、世界遺産に登録された福岡の宗像(むなかた)大社に大絵馬を描いて奉納している。

永崎ひまるさん

「絵馬に関する歴史文献は少なくて……。一番流行ったのは江戸時代で、庶民もみんなでお金を集めて絵馬を奉納していました。元々は、本物の馬を納めていたんですよ」

 依頼される絵や求められる雰囲気は神社によって様々。神様の姿を描くところ、描かないところ、干支も多いというが、「自分の絵の個性を出すより、描かせて頂くという気持ちが絵馬は大事」と永崎さん。神社は日本人の生活に密着したもの、親しみ深いものという視点から描いたイラストエッセイ『ハッピー!! 開運神社めぐり』は、若い人にも多く読まれた。

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「御守や絵馬の仕事をして17年経ちますが、最近はお寺や神社に若い方がすごく多い。ストレートに和の文化ってかっこいい、ということのようですが、絵馬はまねき猫や七福神とおなじ縁起物の一つ。西洋にも奉納画があり、絵馬に相通じます。オリンピックに向けて、日本で長く続く絵馬文化を海外に広く発信していきたいですね」

福岡県・宗像(むなかた)大社。世界文化遺産登録記念大絵馬。樹齢300年以上の天然木曽ヒノキに手描きで描かれたオリジナル色の高い作品。金やラピスラズリなど、天然岩絵具で描かれている
今年の干支「犬」の開運絵馬。伊勢神宮の内宮・参集殿にて授与される。伊勢神宮のお宮と同じ素材の天然木曽ヒノキで、女性に大人気
京都・三嶋神社。大祭用鰻の絵馬。毎年、秋篠宮殿下にも献上されている作品
東京・乃木神社。干支大絵馬。乃木希典(まれすけ)大将の力強さに合わせた画風を心がけたという
鹿児島県・霧島神宮。特別大祭記念絵馬。「天孫降臨」の情景を、無形文化遺産の細川紙に描いている。永崎さんは和紙の伝統保存にも熱心で、埼玉県小川町・細川紙のふるさと大使も務めている
山梨県・甲斐國一宮浅間神社に納めた干支大絵馬「女神と干支を描くシリーズ」。近年、神社仏閣を訪れる若い人たちが増えているというが、ポップなかわいい絵柄の絵馬も好評を博している
伊勢神宮崇敬会奉納。神宮会館の応接室に飾られている。これも天然木曽ヒノキに、繊細な線で描かれている
静岡県・小国神社。破魔矢用干支絵馬。「素朴で、自然あふれる神社の佇まいに合わせた画風です」と永崎さん
島根県出雲・万九千神社の遷宮記念絵馬。神々の直会(なおらい)を描いた絵馬としては新しいタイプの画風で、神様たちも楽しそう
宗像大社の大絵馬と作者の永崎ひまるさん