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今後はハンターの育成がポイントに

東出 コロナ禍に入ってから、東京では狩猟免許取得試験の申込者数が定員の3倍から4倍になったと聞きましたが、他の関東の県では一概にそうではないようです。

 それに単に狩猟が好き、撃つのが好きというハンターが増えても、クマの違法狩猟が増える危険性もあります。悲しいことに違法狩猟は想像以上に多く行われていて、彼らは毛皮や肉のためじゃなく、ただ誉れのためだけにクマを殺している。

米田 ハンターの育成をきちんとやっていかないといけない。俺は昔、鈴木辰五郎や鈴木松治、高堰喜代志といった伝説のマタギを取材して山を一緒に歩かせてもらったんだけど、彼らは本当に素晴らしい山人だった。何をするにも山の理があって、とても美しかった。

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「伝説のマタギを取材して山を一緒に歩かせてもらった」(米田) ©文藝春秋/撮影・杉山秀樹

掟や禁じ手は経験から生まれた理

東出 昔のマタギや本当に狩猟を生業としてた人たちの本や口伝には、山人の知恵が生きていますよね。インターネットには載っていない、実際に山を歩かなければ得られない知識と発見に溢れている。

米田 マタギには掟とか禁じ手がたくさんあって、狩猟の前には神社に行くし、夫婦で同衾してはいけないとか、どこへ行ってはいけないとか、まあ、うるさいんだ(笑)。

 俺も若い頃は何やってんだろうなと思ったこともあったけど、一緒に山を歩けば歩くほど、彼らが積み重ねてきた経験から生まれた理なんだと腑に落ちる。

東出 例えば親族に不幸があったり、結婚を控えていたりしたらこれくらいの期間は山に入っちゃいけないというものがありますが、それは家庭や自分に何かあった時に山に入ると、気もそぞろになり事故に遭いやすい、という経験則から来ているのだと思います。

米田が撮影した母グマと子グマ