イーロン・マスクが率いるX(旧ツイッター)は、本当に全ユーザーに課金をする方針なのか。じつはツイッター買収当初から、マスクには課金に対する明確な考えが存在していたという。

 日本でも発売するなり20万部を突破した大ヒット公式伝記『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン著 井口耕二訳)から、X運営にまつわる、マスクの知られざる戦略を紹介する。

©時事通信社

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 昨年10月末にツイッターを買収したイーロン・マスク。運営における肝(キモ)であると当初から考えていたのが、サブスクリプション(課金制度)だ。名前はツイッターブルー。そう、あの青いチェックマークである。

 じつは既に、著名で信頼に値するとツイッターに認めてもらえれば、青いチェックマークがつく制度は存在し、セレブや政府系の要人といったアカウントには適用されていた。

 そんななかマスクは、月額料金を払っていることを示す認証バッジをもうひとつ作ろうとした。しかし、著名人と有料ユーザーでマークを変えるのはエリート主義だと言われ、最終的には同じ青いチェックマークを付けることになった。

初の公式伝記「イーロン・マスク」の書影

「大恥をかかないよう、あらゆる手を打て」

 いずれにせよ、ツイッターブルーは一石何鳥にもなる妙手だ。

・ひとつのクレジットカードと電話で、ひとつのアカウントのみ認証が受けられる
・それゆえ、トロール(荒らし)やボットを減らせる
・ユーザーのクレジットカード情報が手に入るので将来、金融サービスや決済のプラットフォームの布石になる
・ヘイトスピーチや詐欺の問題も緩和できる 

 11月上旬の開始に向けて、システムそのものの準備は間に合わせられた。しかし、なりすまし対策も必要だった。新しい認証システムを食い物にしようと、大勢の連中が狙っていたからだ。彼らは、青いチェックマークを取ったらプロフィールを書き換えて、他人になりすまそうと手ぐすねを引いていた。それゆえマスクは、技術者たちを集めて、こう念押しした。

洗面台を持ってツイッター社を訪れたマスク氏 マスク氏のSNSより

「大規模なアタックを受けるだろう。悪人連中が、よってたかって防御力を試そうとするはずだ。私をはじめ関係者になりすまし、我々を滅ぼしたいと手ぐすね引いている報道機関にあることないこと吹き込もうとするだろう」

「これは青いチェックマークをめぐる第三次世界大戦だ。こてんぱんにやられて大恥をかかないようあらゆる手を打て」