さらには、巷でもいわゆる観光公害、オーバーツーリズムの文脈でも渋谷ハロウィンの行き過ぎた状況に批判が集まるようにもなっていました。まあ別に渋谷だけが悪いわけでもなく、例えば外国人にとって有名な観光スポットとして渋谷ハロウィンと並んで上位に入る京都や鎌倉などでは、日本で違法な白タクを使い外国人保有の民泊に宿泊し食事もコンビニ弁当で済ませるような、カネのない事実上の「ドブ客」である外国人観光客が増えすぎて問題になっています。
特に、地元にカネを落とさない迷惑客が殺到する事案はメディアでも典型的な観光公害の一種としてかなり取り沙汰されるようになりました。
多くの人が楽しんでくれる祭典にするためには
前述の池袋や蒲田などの取り組みというのも、渋谷のドブ客イベントとなり果てたハロウィンの反省として、先回りして企業を巻き込みイベント自体を管理する文化イベントとしての自律と採算性を目指したものなのでしょう。 裏を返せば、ドブ客対策は客にカネを落とさせるか、カネを持っている客だけを相手にするかといったパターンよりも、より多くの人が安全に楽しんでくれる祭典にするために、企業がカネと治安とを担保する仕組みにすることで何とかしようという取り組みにするほかないのだろうと思います。
態度の悪い花火見物客も観光地に殺到するドブ客も、渋谷ハロウィンで酔っぱらって殴り合いをする奴らも、基本的には何かのきっかけで街に繰り出して友達と騒ぎたいというのが純粋な動機でしょうし、カネが無ければ無いなりに楽しみたいってだけなんだとは思うんですよ。
思い返せば、35年前高校生であった私が渋谷のゲーセンでウロウロしていたのも、放課後カネはないけど好きなことをして友達と遊んでいたいから寄り道して文化的な薫りのする渋谷で時間を過ごしていたという気持ちしかなかったように思います。
愛着を持つほどの文化的背景があるからこそ、地域は栄える
時を経て、心技体揃った立派なおっさんとなった現在は、やっぱり渋谷を懐かしく思ってオフィスにカネを掛けたり、手がけているプロジェクトの広告を渋谷に出そうとしたり、放流した稚魚が脂の乘った鮭として流れる渋谷川を遡上してるんじゃないかってぐらいに愛着はあります。確かにガキの頃はカネは無かったけど、渋谷を歩いているだけで楽しかったという記憶があるからこそ、いま渋谷にカネを突っ込む企画にゴーを出すわけだし、蒲田でハロウィンやりますと言われてもセガの開発拠点のあった駅の近くだなと思い出すだけであんまりピンと来ないんすよね。
相応の年数培ってきた文化ってそういうものですから、新しい人が、蒲田で新しい文化を発信してくれる日が来るといいなとも思います。
若者文化の発信地としてのオルタナティブというのは、その地域に再訪したり投資したりしてくれるほど愛着を持つほどの文化的背景があるからこそ、数年ではなく数十年の時を経て地域は栄えるのだという面はあるんじゃないかと思うんですよね。
そんな気持ちで渋谷区役所を訪問した際、某副区長が私の組織上のボスである新潟大学教授の鈴木正朝さんを激しくDISって街づくりの企画対応どころではなくなるという素敵な事案もありつつ、渋谷に根を張る東急グループが渋谷で乗り継がずに直通運転をしてしまう路線を増やしたことでターミナル駅としてのこの地にも試練が訪れています。いまや、渋谷が渋谷である必要が無くなりつつあるのはちょっと残念なことなんですよね。やはり、街の発展とは、そこに住む人の想いが積み重なった歴史に裏打ちされた文化による「この街でなくちゃいけない」という何かが大事なんじゃないかと思ったりもします。セガのゲーセンとか。
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