昨年12月に発覚した日本を代表する自動車メーカー「ダイハツ工業」で30年以上にわたって行われていた組織的不正。エアバッグの衝撃実験をタイマー作動でごまかすなど命に直結するような悪質な不正のほか、広くデータの捏造や改ざんなども行われていたという。
ダイハツは自動車を組み立てる国内全工場の稼働を昨年12月26日までに全面停止。また、今年1月9日からは国土交通省が、不正のあった車種が安全や環境に関する保安基準を満たすかどうかの確認試験に乗り出している。
自動車業界を揺るがした“ダイハツショック”。同社の複数の現役社員や元社員が「週刊文春」の取材に応じ、ものづくりの最前線である工場の実態を明かした。
不都合があれば隠してしまう組織文化
「厳罰的な社風のもと、上に報告を上げる際に不都合があれば隠してしまう」
これは、複数のダイハツ関係者が口を揃えて証言した、不正の背景にあった同社の組織的文化だ。
こうした言動が平然と行われてきた場所の1つが、「工場」だった。
現役社員が振り返る。
「2005年のことです。トヨタから委託されて生産していた車を入社したばかりの正社員男性が運転中、工場内の柱にぶつける事故が発生。ボンネットとエンジンルームが大破していました」
工場内とはいえ、立派な自損事故である。ところが——。