ただ、女子校という環境自体はすごく好きでした。他愛のない話から学問の話まで気兼ねなく話せる女友達は一生の宝物だと思っています。
――公立中学から再び受験し、偏差値78の超難関校・筑波大学附属高校に合格します。すごいですよね。
八田 それも桜蔭のおかげですね。たとえば高1までに高校3年間の勉強を全部終わらせるようなスピード感で学習をしていたので、桜蔭の中ではそんなに優秀じゃなかった私でも、公立校や塾で困ることがなかったんです。
――ご自身が子育てをする中で、今、親から受けた「子育て」を振り返ることもありますか。
八田 それはありますね。私は「勉強がすべて」みたいな家庭で育ってきているので、勉強はできたほうがいいし、やらなくてはいけないもの、という価値観が自分の中に強烈に根付いていることを感じます。
東大合格後に「自分が何をしたいのかわからなくなった」
――お子さんの勉強にもつい熱が入ってしまう?
八田 子どもには遊びの中で学んで欲しいと思っていて、私も遊びながら色々と教えたりするんですが、「私はこの歳の時にこれができたから、この子もできるはず」とつい熱が入ってしまうことがあって。子どもは私とは全く違う人間だと頭ではわかっているのに、気を抜くと同一視しかけている自分に、これはマズいぞ、と感じました。
それに、私自身は親の敷いたレールを疑いもせず歩んできてしまったことも反省点のひとつで。
――お子さんにはそのようになってほしくない?
八田 東大まで行かせてもらった両親には本当に感謝しています。でも、私自身のゴール設定が、東大に入って母の干渉から逃れることだけになってしまっていた。だから受かった後は、自分が何をしたいのか、本当にわからなくなってしまって。
うちの子もすごく聞き分けがいいので、ちょっと心配しています。手がかからないといえばその通りですが、自分で考えて解決する力を育んでほしい。そのためにも、私は干渉しすぎないことを肝に銘じていかないと、と思っているんです。
撮影=杉山拓也/文藝春秋