「ロッキーおじさん」をご存知だろうか。あなたが関東近郊のマラソン大会に出走経験があるなら、一度は出会ったことがあるはずだ。東京マラソンはじめ数々の大会のもっともキツいとされるポイントで、映画「ロッキー」のテーマ曲を大音量で流しながら、ランナーを見守ってきたマラソン応援界の有名人である。

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 でも、ロッキーおじさんの応援は一風変わっている。ランナーたちに声をかけることもなければ、手を振ることもない。「ロッキーのテーマ」のサビの部分をひたすらリピート再生し、「ロッキーになれ」などのメッセージが書かれたボードを持つ。つねに無言。ニコリともしない。

 ロッキーおじさんの話題が、市民ランナーの間を駆け巡ったのは、今年の東京マラソンのときだった。おじさんが「ラストロッキー」のボードを手に持ち、引退を宣言したからだ。

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 そんなロッキーおじさんに話を聞いた。なぜ市民ランナーを応援しつづけたのか、そしてなぜ引退を決断したのか——。

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ロッキーおじさんがロッキーおじさんになったわけ

――今日はよろしくお願いします。

ロッキー 僕に話を聞いたところで何も面白いものは出てこないと思うんだけどね。

――色々なマラソン大会でロッキーおじさんは目撃されていますが、始めたきっかけは何だったんですか?

ロッキー 10年前に同僚のAさんがつくばマラソンに出ると聞いて、僕の地元だったというのもあって、サプライズで応援に行ったのが最初。大変喜んでくれたので、そこから毎年つくばは応援に行ってます。ただ、毎回Aさんが出るかは分からなくて。結局10年で会えたのは2回でしたね。

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――え? 知らないで応援に行ってたんですか? 事前に本人に聞いたらいいじゃないですか。

ロッキー 聞いたらサプライズにならないでしょう。最初の応援のときも、誰かと立ち話してるのが聞こえてきたから、「じゃ、応援に行こうかな」という軽い気持ちから始まってるし。あ、勘違いしないでね、不倫とか、浮気とかじゃないから。だいたい、言っちゃ悪いけど、女の人苦手だし、怖いし。

――東京マラソンなど、つくばマラソン以外でも目撃情報がありますが。

ロッキー 東京マラソンは同僚のBさんが出場すると聞いたから行ったんだよね。今、Cくんという若い子が入ってきて、彼が「次ココ行くんですよ」とかやたらに大会に出やがるからさ。「えー」と思いながらも、行けば楽しいから、結局昨年は10大会ぐらい行ったかな。