1ページ目から読む
2/3ページ目

「マンションに資産価値がある」という価値観は継続する?

 ここまでは自分たちに直接降りかかるリスクだが、世の中で生じるリスクはこんなものではない。中国と台湾の緊張激化、ウクライナのみならず世界中のどこにいつ起こるかわからない戦争リスクに巻き込まれる可能性、大地震、火山噴火などの災害リスク、気候変動などの気象リスクなどが想定されるのにもかかわらず、無事に35年間、のほほんと今の環境が続き、マンションには資産価値があるとする価値観が継続していくと考えるのは楽観的にすぎるだろう。

 マンションはともかく、最近の日本の国力衰退については、ようやく日本人の多くが気付き始めている。低金利は株式や不動産の高騰をもたらし、一部の富裕層がその恩恵にどっぷりと浸っているが、低金利が今後も続くということは、海外との金利差が広がることで更なる円安が加速されていくことを意味している。

 円安は輸出産業を潤すなどと言われるが、現代日本は輸出で儲けている国ではなく、資金運用で儲けている国であり、低金利と円安はさらに国内資金を海外に逃がすことを後押しする。投資家は海外で儲けるかもしれないが、一般庶民は輸入物価が上がり、生活苦が一層強まることは自明である。

ADVERTISEMENT

日本がこれから陥る可能性の高い「食料の危機」

 だがこの先に来る次なるクライシスにまだ多くの国民は気づいていない。円安は日本のバイイングパワーを著しく削ぎ始めている。海外での原材料の買い付けはもちろん、食料の多くを輸入に頼る日本は、現在多くの食料品の買い付けで「買い負け」状態に陥っている。

 日本の食料自給率は2022年、カロリーベースで38%だ。この数値は先進国の中で最も低い水準にある。世界各国をみるとカナダは233%、オーストラリア169%、フランス131%、アメリカ121%をはじめドイツで84%、イギリスでも70%だ。

 日本も1965年で73%を記録していたが、自給率は日本経済の成長とともに下がり続け、強くなった円で世界中の食料を買い付けるようになった。そして現在、日本の食は今後の世界情勢に委ねられた状態になっているのだ。これからの未来で、自分たち日本人が最も心配しなければならないのは、実はマンション購入ではなく、食料の安定的な確保なのだ。

 ところが多くの政治家は農業政策にあまり興味を示していないように映る。かつての自民党は農村部の票が岩盤支持層といわれ、農業政策は国の重要な政策基盤となってきた。ところが現在は地方選出の議員でも、地方に実際には住んだことがない2世、3世議員ばかりだ。多くの官僚を輩出する東京大学の学生も今や学生の7割が大都市圏で生まれ育った都会っ子で占められており、地方の本当の姿がわかっている者は少数派だ。

 今後どこかで生じる様々なリスクを通じて、日本が食糧難に陥る確率は大地震の発生確率以上に高く、そしてその影響は日本全国に及ぶものとなる。