明治東京を舞台に、しっかり者の令嬢と不思議な一族の血を引いた青年が妖魔がらみの事件を追う――。文春文庫の書き下ろしシリーズ『暁からすの嫁さがし』の第2巻が、6月5日に発売される。著者は、小説投稿サイト「小説家になろう」でデビューした雨咲はなさん。
たまたま時期が重なり、5月下旬から6月上旬にかけて、別々の出版社から新刊を3冊刊行することに。5月25日(土)には、第8回オーバーラップWEB小説大賞金賞受賞作の続編『生贄姫の幸福2』が、5月31日(金)には、『初恋の少年は冷徹騎士に豹変していました』が発売された。
「それぞれまったく異なる世界観と雰囲気の作品たち」だと話す雨咲さんに、それぞれの読みどころについて伺った。
第8回オーバーラップWEB小説大賞金賞受賞作の続編『生贄姫の幸福2』(5/25発売)
『生贄姫の幸福』は、もともと「小説家になろう」に投稿していた作品を書籍化してもらったもので、今回の第2巻は全編書き下ろしになります。
こちらのヒロインは「生贄」として小さい離れに閉じ込められて過ごしてきた設定です。なので、少し世間知らずで、人間らしい感情が欠けています。第1巻では晴れてヒーローと一緒になれたけれど、外の世界に出て夫婦として生活するときに、彼女の人格的に歪なところが課題として出てくるといいな、と思いました。なので、第2巻ではヒロインの成長が中心になっています。
ライトで楽しい読み味な『初恋の少年は冷徹騎士に豹変していました』(5/31発売)
『初恋の少年は冷徹騎士に豹変していました』は、タイトルの雰囲気通り、ライトノベルらしい読みやすさを意識して書きました。商人の娘として生まれ育ったヒロインが初恋の相手と再会したら、彼は全く笑わない騎士になっていた……というお話です。猪突猛進気味なヒロインと、暗い過去を背負った冷静沈着なヒーローのかけあいを楽しんでいただけたら嬉しいです。
実は、今作で初めて「長い文章系」のタイトルに挑戦しました。私はまずタイトルを決めてから小説を書くことが多いのですが、今回は小説を書いてからタイトルを決めることになり……。文章系のタイトルが思いつかず、ものすごく悩みました。サブタイトルの「全力で告白されるなんて想定外です!!」は担当編集さんの案です(笑)。
明治東京を舞台にした妖×恋もの『暁からすの嫁さがし 二』
明治時代の東京を舞台に、しっかり者のヒロインと、不思議な一族の青年が妖魔がらみの事件を追うシリーズの第2巻です。「小説家になろう」では西洋ファンタジーが好まれる傾向にあるので、文庫の書き下ろしで好きだった明治時代ものの小説を書けて、ようやく念願が叶いました。
『暁からすの嫁さがし』の第2巻は『初恋の少年は冷徹騎士に豹変していました』と同時期に書いたので、世界設定や作品のトーンは違いますが、ヒロイン像がちょっと似ています。裕福な商人の娘だけれど「平民」階級なところや、ちょっと思い込みが激しくて突っ走るところなど……。ヒーローへの恋心に決着をつけるために自分から行動するところにも、共通点があるかもしれません。
3作とも全く違った読み味ですが、それぞれにヒロインの成長が感じられると思います。楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!