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世界的に宗教離れが進んでいる理由とは

入山 『宗教を学べば経営がわかる』の対談でも議論させていただきましたが、今、世界で若者から宗教離れがだんだん進んできています。たとえばピュー・リサーチ・センターが2023年に行った調査によれば、アメリカ人の28%が無宗教だったと。「信仰している宗教は何ですか」と尋ねると、「自分は無神論者です」とか「特に興味がありません」という方が1972年は5%で、2007年には16%、それが今や28%にまでなってきているそうです。世界的に宗教離れが進んできているという理解でよろしいですか。

池上 まったくその通りですね。特にヨーロッパで宗教離れがかなり進んでいて、カトリックの信者がどんどん減ってきているがゆえに、ローマ教皇がついにアルゼンチンから出るということになったわけですよね。たとえばヨーロッパの場合、ドイツにしても北欧諸国にしても、実は教会税って税金がありまして。これは、政教分離であるにもかかわらず、キリスト教の教会に入っている信者には、国が代理で教会の維持費用を徴収するんですよ。代理徴収をして、その集めたお金を教会に渡すという形になっています。大学でいえば、大学が学生自治会の会費を代理徴収して、学生自治会に運営費として渡すのと同じ構図なんです。そうすると、教会に入っていると税金が取られてしまうから、そこから離脱する人が増えてきているんです。結果的に教会にお金が入ってこないということになり、ヨーロッパ、イギリスもそうですけど、もともと教会だったところが、今マーケットになっているところもありますね。

 

入山 だんだんお金に困ってきているんですね。

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池上 そうなんです。アメリカの場合も昔はみんな本当にそれぞれ育ったところで生涯を過ごすってことになると、教会に行くのが当たり前でした。でも時代が進んでいくと、たとえばニューヨークやロサンゼルスに新たに入ってきた若い人たちってわざわざ教会に行かないんですよね。結果的に教会に通うという習慣がなくなってくる、信仰心が薄らいでいくという構造になっていると思います。

入山 なるほど。

池上 日本の場合も、田舎にいると神社の氏子、お寺の檀家でも、東京に出て働くようになると、氏子も檀家もなく、全く無縁ですよね。それと同じことがアメリカでも起きているんだということです。

入山 まさにプロダクトマーケットフィットが揺らぐというか、ずれてきちゃってるわけですね。そうすると、これからの時代にあった宗教みたいなものが必要になってくるっていうことなんですかね?

池上 そうだと思いますね。だから、たとえば統一教会は大きな社会問題になりましたけど、従来の日本の場合は家が単位で神社の氏子やお寺の檀家でしたが、そうではなく、1人ずつをターゲットにしていくというビジネスモデルの方が伸びてきたのかなってことがあるんですよね。

入山 なるほど。面白いですね。


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