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『SHOGUN』は、アメリカ社会が重視している多様性や包括性がハリウッドに浸透している状況も映し出している。白人が偏重されている状況が批判されていたハリウッドは、近年、制作者や出演する俳優の属性にかかわらず、優秀な作品を正当に評価する方向へと舵を切っている。その意味で、『SHOGUN』はキャストやクルーが日本人というマイノリティー性が受賞に導いたのではなく、作品そのものが純粋に評価された結果としての受賞と言えるだろう。

『SHOGUN』の多様性を疑問視する声

 その一方で、『SHOGUN』の多様性を疑問視する声もある。様々な意見記事が掲載されているオンラインプラットホームMediumは「『SHOGUN』の中で、黒人はどこにいるのか?」と題された記事を掲載、記事の著者は、その時代に黒人が日本にいたことを示す歴史的証拠があるにもかかわらず、黒人の登場人物が出てこないと主張している。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の映画についても、アメリカで20%を占めるヒスパニック系アメリカ人がキャスティングされなかったことを疑問視する声があがったが、『SHOGUN』でも類似した声が聞かれるほど、作品がwoke(社会正義や人種差別問題などに対して目覚めていること)か否かに敏感になっている人もアメリカにはいるようだ。

ハリウッドにおける日本映画の長い系譜

 ところで、受賞の背景には、ハリウッドにおける日本映画の長い系譜があったことも忘れてはならない。その系譜は、1951年、黒澤明監督の『羅生門』が第24回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞したことに遡る。1957年には、『サヨナラ』でマーロン・ブランドと共演した梅木美代志が助演女優賞を受賞している。近年では、『おくりびと』が外国語映画賞に、『ドライブ・マイ・カー』が国際長編映画賞に輝いている。映画は評価されてきた日本だが、アメリカのテレビ界では、日本の作品や日本人俳優はあまり評価されていなかった。2007年に、『HEROES』に出演していた俳優マシ・オカがプライムタイム・エミー賞のドラマ部門の助演男優賞にノミネートされるに留まっていた。その意味で、『SHOGUN』、そして、真田氏は日本のエンターテインメント業界を世界へと牽引していく大きな力となった。

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 受賞について「今後の業界、若い俳優たちに大きな布石になるのではないかと。いろんな才能が海外に飛び出していくのをサポートしたい」と熱く語り、今や“世界のサナダ”となった真田氏。世界は『SHOGUN』の次のシリーズを心待ちにしている。