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映画はそもそもリメイク版だったが…

 そもそも、『SHOGUN』は1980年にアメリカでテレビドラマ化されていたが、それは原作の小説を書いたイギリス人作家ジェームズ・クラベルの目線で描かれたものだったことから、日本人の目線でオーセンティックにリメイクされた『SHOGUN』は、アメリカの人々の目に新鮮に映ったのかもしれない。米ナショナル・パブリック・レディオは両者を比較してこう述べている。

「1980年時の視聴者は、難破したイギリス人航海士ジョン・ブラックソーンが17世紀の日本やそこで彼を捕らえた侍について理解した程度だった。それから40年以上経って作られたリメイク版は、オーセンティシティー(本物)を重視する方向へと進み、その努力は報われた」

 内容的には、受賞した『SHOGUN』は「オリジナルよりもセクシーで、より暴力的で、考えさせられる啓発的な作品」との指摘もされている。

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©時事通信社

日本語で、字幕付きであることもユニーク

『SHOGUN』はセリフの約7割が日本語で、字幕付きであることもユニークだ。アメリカの視聴者は字幕を読むことに慣れていないと言われているが、コロナ禍、巣篭もり生活を送る中で、映画配信サービスが流す字幕つきの非英語圏の作品にも慣れ親しむようになり、以前のようには、字幕を読むことに抵抗を感じなくなっている。

 米紙ニューヨーク・タイムズも「(『SHOGUN』の)字幕は随所にあって、しかも、非常にクラッシーな字体で表示されている。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の高地ヴァリリア語や『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』のクウェンヤ・エルフ語、ましてや『イカゲーム』の韓国語に耐えられるのなら、この作品でも問題ないだろう」と評している。

作品そのものが純粋に評価された

 同紙はまた、『SHOGUN』がヒットした背景に、アメリカで人気を博したドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の影響を見出している。

「『SHOGUN』はポスト『ゲーム・オブ・スローンズ』のテレビ界の産物だ。高予算で中世を思わせるアクション・アドベンチャー時代劇で、メロドラマ的要素が強い。『ゲーム・オブ・スローンズ』に影響を受けた多くの番組がファンタジーであるのに対し、『SHOGUN』は純粋な歴史小説だ。しかし、その映像の壮大さは、まるでドラゴンが登場しない叙事的なファンタジーのようだ」