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 研究対象から理由もなく女性を除外してしまうというのは、明らかに差別的である。また、世帯主の職業や収入などが他の家族に影響するというのはある程度まで事実だが、だからといってすべてを世帯主に代表させてしまうというのは、非科学的としかいいようがない。このようにかつての階級・階層研究には、非科学的とすらいえるほど深刻なジェンダー・バイアスがあったということができる。

 1980年代以降になると、こうした研究方法に対する反省が生まれ、女性も研究対象に含まれるようになっていく。日本の階級・階層研究でも、1995年SSM調査から女性が男性とまったく同じ形で調査対象に組み込まれ、これによってすべての調査項目について、女性と男性を同じ方法で研究対象とすることが可能になった。

「男性前提」で組み立てられた階級・階層研究の問題点

 しかし、これによって問題がすべて解決したわけではない。なぜなら、それまでの階級・階層研究の方法が、男性だけを対象とすることを前提に組み立てられていたからである。

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 第1に男性は多くの場合、フルタイムで職業に従事しているから、その職業にもとづいて、所属する階級・階層を判断すればよかった。

 しかし女性は、職業をもっていなかったり、あるいは家事などのかたわら、副次的に職業に従事していたりする。このため、男性で用いられてきた階級・階層所属の判断のしかたでは、一部の女性たちはどの階級・階層にも分類できない。

 第2に男性と女性では、同じ職種や地位でも、仕事の内容や収入が異なることが多い。たとえば企業などの事務職の場合、男性事務職の多くは重要な任務を与えられてやがて管理職に昇進するのに対し、女性事務職は単純な事務作業に従事して、管理職に昇進するルートをもたないことが多い。

©tokyoimages/イメージマート

 また旧中間階級には家業を夫婦で営む人々が多く含まれるが、そこでは男性が事業を統括し、女性が副次的な役割を引き受けることが多い。このとき、それぞれの階級・階層の性格は、男性と女性で異なることになる。

 これらは、男性だけを研究対象にしているうちは考慮する必要のない、少なくとも気づかれることのない問題だった。しかし1970年代以降、それまでの階級・階層研究の問題点として、フェミニズム、とくにマルクス主義フェミニズムの立場をとる理論家たちによって鋭く指摘され、解決を迫られることになった。

 もちろん、フェミニズムの理論家たちの主要な関心は、階級・階層研究にあったのではなく、あくまでもなぜ女性が男性よりも不利な立場に置かれるかというところに向けられていた。

 しかし社会学のなかで、その主張をもっとも重く受けとめることを求められたのは、階級・階層研究だったといってよい。