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受け継がれる「還住マインド」とは?

「例えば、島には小さな商店が1つしかないから、自分で畑を持っている家庭がほとんどです。採れた野菜は自分たちで食べるのはもちろん、ご近所さんにもお裾分けします。

 また、青ヶ島の商店では魚が売っていません。そのため魚を手に入れようと思ったら、港で釣りをしたり漁に出たりするのですが、断崖絶壁に囲まれた島の海は荒れやすく、収獲できない日も多いから、島民にとって魚は貴重な食料です。それでも収獲できた日はお裾分けをするのが、青ヶ島では当たり前の光景。

 青ヶ島では、今でも物々交換が盛んに行われているのですが、その根幹には、力を合わせて荒れ果てた土地を復興させた『還住マインド』があるんじゃないかな、と思っています」

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ニワトリを育てる島民から卵を分けてもらう佐々木加絵さん

少子高齢化で青ヶ島も人口減少

 還住時の青ヶ島の人口は240人ほど。1881年頃には、最大人口754人を記録したという。その後、小笠原へ行く船が青ヶ島に寄港するようになると、小笠原諸島に島民が流出し、人口は400人程度で推移していった。1940年に青ヶ島が村として独立を果たしたときも、人口407人での出発だった。しかし2024年9月1日時点で、青ヶ島の人口は162人まで減ってしまっている。

「私が子どもの頃、同級生は4人いましたが、今の子どもたちは同級生がいないことが“当たり前”です。

 少子高齢化で子どもの人数が減っているのは、本土も青ヶ島も一緒です。でも、『だからしょうがないよね』と諦めるのではなくて、『この状況をなんとかしたい』と思っている人が青ヶ島にはたくさんいます。それはやっぱり、生まれ育った『青ヶ島』という土地が大好きだから」

本土同様、少子高齢化が進む青ヶ島

YouTubeで島の日常を発信

「青ヶ島の状況をなんとかしたい」と思っている島民のひとりが、加絵さん自身だ。YouTubeチャンネル「青ヶ島ちゃんねる」を開設し、島の日常を発信。現在は登録者数約19万人の人気を誇り、メディアにも度々取り上げられている。

「YouTubeで島の日常を発信していると、『なんで青ヶ島の人たちは、地元が大好きなの?』と聞かれることがあります。いろいろ理由はありますが、そのベースには、やっぱり『還住マインド』が関係していると思っています。

 青ヶ島では、自分で事業を営んでいる人が多い。そして人口が少ないから、必要な食料を交換したり、仕事の手伝いをしたりして、みんなで協力して生活しています。だから、『自分たちがこの島を作っている』という意識が芽生えやすいんじゃないかな。

 どうしたら青ヶ島の人口が増やせるかは、まだまだ模索中です。でもまずは、『この島の還住マインドを知ってもらう。そのために私たち島民が、島の歴史や文化を語り継いでいく』ことが大事なんじゃないかな、と思っています」

取材・文=仲奈々
写真提供=佐々木加絵さん

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。