1ページ目から読む
2/3ページ目

「結果を出す」から「バリューを出す」組織へ

 いわゆる日本式の「結果を出さないといけない」プレッシャーと、インターナショナルチームで「バリューを出す」ことを求められることとは、似ているようでまるで違う。

 両者とも目標は立てる。例えば「従来8カ月かかっていたソフトウェアのリリースを1週間短縮する」。それを目標に、5日間のハックフェストを実施するとする。

 日本だと、一度1週間短縮という目標が決まったら、途中で未知の問題が発覚しても、「プロなのだから、一度決めた納期はしっかり守り通そう」と徹夜などして必死に達成しようとする。そして、その目標が達成できなかったときは「失敗」の烙印を押されて次回のチャレンジができなくなる。このため、一度目標が定められると、予測が誤っていても、必ずやりきらないといけない対象になるので、全員に相当なプレッシャーがかかってしまう。

ADVERTISEMENT

©AFLO

 一方、後者は、目標へ向かう途中で問題が発生したら、「どうやったら達成できるか?」を常に考え、工夫するが、目標設定に無理があると判明した場合は、もっとも優先 順位の高い最初の1ステップのみを目指すようにすぐ方向転換する。

 定時以降の仕事や、休日出勤でカバーしようという流れになることはない。できないものはできないとクールに判断する。簡単に納期を延ばしてしまう。KPIは定時で無理なく楽に達成できる程度のものであるべきだという大前提がある。

「一番重要な仕事は何だ? 君は今それだけをやればいい」

 私がマイクロソフトに入社した当初、大量の英文メールにも慣れず、いろんな仕事に手を出してアップアップになっていたときに、上司のダミアンにこんな一言を言われた。

「ツヨシの一番重要な仕事は何だ? うん、DevOpsハッカソンだな。君は今それだけをやればいい」

 きっと日本ならば、いい上司でも「最初は大変だろうけど、慣れるまでしばらく頑張るしかない。私もできるだけ手伝うから頑張ろう」となるところだ。

 その後も、ダミアンに限らず、チームメンバーからのアドバイスで、「ちょっとしんどいけど頑張ろう」「君が本来やるべき仕事だから時間がかかってもやり遂げて」といった物言いはされたためしがない。インターナショナルチームでは、定時でできる量になるようシンプルに「作業量」を今の実力でできる範囲内に調整するのがほとんどで、予定されたアウトプットより少なくなっても全く気にしない。

 目標はあくまで目標であり、定例会議でも、スケジュールが計画どおりに進んでいるか、進捗状況なんていちいち聞かれない。「やってみて実際どうだったか? 改善ポイントやベストプラクティスは?」ということを尋ねられる。そこにこそ仕事の価値はあることを全員が認識しているのである。