――では、16歳でモスクワ音楽院に入ったと。試験は。
きり 実技、面接、セオリー、ロシア語、文学の5科目試験で、そこで受かれば入れます。音楽院に入るために音楽院予備科に1年通う人とかいましたけど、私は音楽学校でずっと試験対策をやってきたようなものなので、入学するのはそんなに難しくないだろうなとは思ってました。で、受かってピアノ科へ。
――モスクワ音楽院は、ニューヨークのジュリアード音楽院、パリ国立高等音楽院と並ぶ超名門ですが、授業も競争も厳しいわけですか。
きり すべてを生徒にゆだねる感じで、厳しくしたい人は自分で勝手に厳しくすればいいし、サボりたい人はまったく学校に来てなかったですね。要するに、試験さえ受かれば勝手にしていいという。出席日数でどうこうとかもないので。
――音楽院での1日のスケジュールは、ギッチリ。
きり 3コマぐらいあって、それにプラスして週2で実技の授業がありました。ピアノ以外にも、心理学、歴史、芸術の授業もあって、私は心理学を取っていて。
ただ、授業は講師によるというか、私の教授はちゃんと見てくれる方だったので実技が週2でしたけど、すべてアシスタントに任せて月に1回しか授業をやらない教授もいて。なので、最初に教授の良し悪しを見極めて、良くない人の授業を受けるぐらいだったら、ほかの音大を検討したほうがいいという。
キングオブコメディのライブを見られる日本人をうらやんで
――きりさんは、モスクワ音楽院では優等生ではあったのですか。
きり 私は首席で入学したので、それなりにちゃんとした扱いは受けていたと思います。でも、周囲からトガってると思われてました。音楽院では友達は一人もいなくて、他の人としゃべってもないというのもあったし。
――友達がいないのは、昔から。
きり いませんでした。本当に好きな人としかしゃべりたくないし、そうじゃない人と一緒にいて人生の時間を無駄にしたくないって考えていたところがあって。
――モスクワで幼い頃からピアノを弾くなかで、日本に想いを馳せることはありました?
きり 私、10歳か11歳で、キングオブコメディさんにハマったんです。それで、キングオブコメディさんのライブを見れる人たちがうらやましいなって。さすがに気軽にロシアからライブを見に行けないけど、日本だったら頻繁に行けるじゃないですか。だから「キンコメさんのライブにいっぱい行ってあげなさいよ、日本人」と思ってました。
写真=橋本篤/文藝春秋

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