テストでは先生が「カンニングしてもいいぞ」って
――ロシアの教育を受けてきて、印象深かったものってありますか。
きり テストのとき、先生が「カンニングしてもいいぞ」って言うんですよ。生き延びる力を養うためには、そういうズルも必要だという理由で、カンニングが許されるんですよ。ただし、カンニングしてもいいけど、くだらない手は使うなよと。
バレても先生が唸るような手の凝ったものとか、面白いと思えるような方法でカンニングをしろと。そういうものだったら、減点どころか加点してあげるって。
たまたま、私が教わっていた先生がそういう考えなのかもしれないですけど。テストのたびに、ちょっとした大喜利状態になって、みんなでカンニングするみたいなことがありましたね。
――きりさんもカンニングを。
きり もちろん。私が先生に褒められたのは、デザートのパフェに刺さってるちっちゃなパラソルを使ったカンニングで。その傘の折り目のひとつずつに、年号とか書いていって。それを置いてカンニングしてたら、先生がメチャクチャ笑ってくれて。
あと、日本語で書いたものを堂々と机に置いていたら、先生が「さすがに、これは先生もなにが書いてあるかわからない」と言ってましたね。
小さい頃から通えるロシアの公立音楽学校
――学童クラブ的なものは。
きり ありますね。共働きの家庭の子とかは、そのまま学校に残ります。私は残ったり、残らなかったりでしたけど、学校が終わったら音楽学校に行かなきゃいけなかったので。
――小さい頃から、音楽学校に。モスクワ音楽院に、幼児コースみたいなものが?
きり いや、音楽院は大学になるので。小さい頃から通える、公立の音楽学校があるんです。公立なのでぜんぜんお金が掛からなくて、入学テストもあるんですけど基本的に希望者は全員入れるという。
――天才ピアノ少女や天才バイオリン少年じゃなくとも、入学はできるんですね。
きり 成績順でクラスが分けられるとかはありますけど、入学はできるし、どの生徒にもきちんと教えてくれます。公立の音楽学校に行かないで、お金を掛けて学ぶ子もいますけど、それでもそんなに高くはないですね。
――スケジュールは、けっこうキツめでしたか。
きり 本当にパンパンでした。学校が14時か15時に終わるんですけど、そのまますぐ音楽学校に向かって。で、授業を受けて、練習して、家に帰ってからも宿題をやって、という。遅いときは、夜の22時くらいまで学校にいましたね。
小学校低学年はそんなものですけど、10歳からはもっと大変になって。宿題の量が凄いんですよね。音楽学校を22時に終えて、家に帰ってからは泣きながら宿題をやって、毎日の睡眠時間が3、4時間になってしまうんですよ。それで普通に学校に行って、1時間目から授業を受けるので。さすがに13歳あたりから、学校に行かないシステムを利用するようになって。
――そんなシステムが。