きり 同じ学校ではあるんですけど、家庭学習みたいなのも選べるんですよ。自分の家で勉強して、試験を受けるときは学校に行くシステムなんですけど。
――音楽学校の成績が優秀だと、家庭学習が許される?
きり いや誰でもできます。人によって学習のスピードが違うので、みんなで同じ授業を受けなきゃいけないわけではないですし、自分で教科書を読んで勉強できる子は勝手にやればいいという考えで。
才能だけではどうにもできない「ものすごくちゃんとした基礎」
――ピアノは自分からやりたいと。
きり 私はべつにやりたくもなかったんですけど、たまたま音楽学校に入って、たまたまいい先生が付いてくれて。全部、たまたまです。
――それでも才能があったと。
きり ピアノって、最初に付いた先生ですべてが決まると私は思っていて。ほんと、たまたまいい先生に付いてしまったら、たまたまものすごくちゃんとした基礎が身についてしまって。やっぱり基礎が身についた人間は、他と比べたときに負けないんですよね。とにかく積み重ねなので、10年しっかりと基礎が積み重ねられちゃうと、そこでひっくり返るということがないんです。もう、それは才能だけではどうにもできないので、そこは本当に先生のおかげですね。
――音楽学校で教わった先生は、有名な方。
きり 名前を調べてパッと出てくる人ではないんですけど、それはその人が出したくないから出てこないというだけで。おそらく、モスクワのなかではトップクラスのすごい人ではありました。
――女性ですか。
きり 女性です。70代で、私の祖母くらい。そういう先生がモスクワにはけっこういるんですけど、あんまりお給料をもらってない感じなんです。というか、その先生もそうなんですけど、お金で仕事をしないんですよね。1日1時間のところを、4時間とか5時間見てくれるんです。私の母が「さすがに申しわけない」と、少しだけでもお金を渡そうとしたことがあったけど、絶対に受け取らなかったですね。
16歳で名門モスクワ音楽院へ
――11年制の普通学校を卒業して、モスクワ音楽院へ。
きり 11年制なんですけど、私は9年で卒業してるんです。7歳で普通校に入ったので、本来だったら18歳で卒業なんですけど、最後の4年分の勉強を2年でやる制度を利用していたので、16歳で卒業できたんです。縮めるといっても、先の分まで教科書を読んで、前倒しで試験を受けるだけなんですけどね。
先生に2年分を短縮できないかと頼めば、先生が前倒しで試験を受けさせてくれるという。何点取れば卒業できるということもないんですけど、私は良い成績を残して卒業したくて頑張って。