なぜイマドキの若手社員はすぐ会社をやめてしまうのか? 昔よりも労働条件も給料も向上しているのに何が不満なのか? この問題のからくりを、若手の離職問題の専門家である井上洋市朗氏の新刊『離職防止のプロが2000人に訊いてわかった! 若手が辞める「まさか」の理由』(秀和システム)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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若者がやめる「本当の理由」は…
多くの企業が人手不足に悩む中、若手人材の確保のために企業は、様々な施策を打ち出しています。初任給アップや転勤制度の見直し、入社前の配属確約、若手新人の残業禁止などなど。しかし、万能な対策はありません。
どんな対策でも、若手社員が辞める理由に対応したものでなくては、効果がありません。そして、実は多くの方が、若手社員が辞める理由を勘違いしているのです。
若手社員が辞める理由について、よく言われるのは給料と人間関係の問題です。これは、離職対策がテーマの研修や講演会の事前打ち合わせでも頻繁に耳にします。
ある地方で講演会の依頼をいただき、事前打ち合わせをした際には「結局は給料の問題だと思いますが、地方の中小企業は現実的に給料アップが無理なので、給料アップ以外の話をしてください」と真剣な表情で言われたこともあります。
たしかに、給料は重要な要素の一つですが、それだけが理由ではありません。
厚生労働省(厚労省)が発表する新卒入社後3年以内の離職率の推移を見ると、直近10年は大企業(従業員1000人以上の事業所)では上昇傾向であることがわかります。2021年卒は、大企業の新卒3年以内離職率(大卒)が過去最多の28.2%でした。
一方、中小企業の新卒3年以内離職率(大卒)は、直近10年、大企業ほど上昇していません。一般的には、大企業のほうが給料がよい傾向にあるので、給料が問題であれば、大企業の2年以内離職率が、中小企業より上昇傾向にあるのは違和感があります。
人間関係についても同様です。従業員が少ない中小企業のほうが、人間関係は密になりがちですし、イヤだと思ったときに異動願いを出すこともできません。
人間関係がイヤになったときに、逃げ場がないのは中小企業のほうです。にもかかわらず、中小企業より大企業の3年以内離職率のほうが、上昇傾向にあるのです。
では結局、理由は何なのでしょうか?