出演してから人生が少し変わりました

 本作は、遺産相続をめぐる物語だが、遺産を欲しがる子どもや孫に対するおばあちゃんの気持ちについて、セームカムさんはこう言う。

「おばあちゃんには3人の子どもがいます。長男には家族がいて、それなりにいい暮らしをしています。次の長女(エムの母)は結婚して実家を出ています。そして末っ子の男の子はすごく生活が苦しい。だから、おばあちゃんとしては生活が苦しい末っ子に遺産をあげたいという気持ちもあるけれど、孫(エム)も小さいころから可愛がってきた。そのおばあちゃんの愛は子どもたちにも孫にも伝わったと思います」

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 ポンジッティサックさんも本作が相続とお金の話をテーマにしていることについて、こう語った。

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「タイ人、中華系タイ人、そしてアジア人の性格として、お金で愛情を示すということがあると思います。誰かを愛していれば口に出して『愛している』と伝えたり、いっしょに時間を過ごすべきだと思いますが、時間のかわりにお金をあげる。お金が絡むから複雑なことが起きます。映画の製作者としては、家族が一緒に過ごせないなら、いったい家族とは何だろうという問いかけをしたつもりです」

 観客から、タイやアジア各国で映画がヒットして、何か変わったことがあるかという質問が出ると、セームカムさんはこう言って微笑んだ。

「出演してから人生が少し変わりました。どこへ行ってもいろんな人に話しかけられたりしています。小さい子供たちは私たちに会いたいと言って駆け寄ってきます。そして子供たちは、おばあちゃんの遺産はいったいいくらだったの? みたいなことも聞きますが、私には答えることができません(笑)」

 終演後の会場前では、ファンの求めにいつまでもサインと撮影に応じるセームカムさんの姿があった。

©OAFF2025

(作品紹介)
大学を中退してゲーム実況者を目指す青年エム。従妹のムイが、祖父を介護したことで豪邸を相続したと聞き、自分も楽をして暮らしたいと画策。エムには一人暮らしの祖母・メンジュがおり、ステージ4のガンに侵されていることが判明。不謹慎にもエムはメンジュに近づき、彼女から信頼され遺産を得ようとする。しかし、メンジュの慎ましくも懸命に生きる姿に触れる中で彼の考えは変わっていく。タイ映画史上初、アカデミー賞国際長編映画部門ショートリスト入り。製作は『ハッピー・オールド・イヤー』(OAFF2020)、『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』(OAFF2023)等で知られるGDH。

 

監督:パット・ブーンニティパット/出演:プッティポン・アッサラッタナグン、ウサー・セームカム、サンヤ・クナーコン、サリンラット・トーマス /2024年/タイ/125分/配給:アンプラグド/©2024 GDH 559 CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED/6月13日(金)ロードショー

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